『ブギウギ』富田望生演じる小夜の変化と今後の行方 なぜスズ子の付き人を辞めたのか

『ブギウギ』小夜の変化と行方

 戦時中の空気と彼女の誇張されたラウドなリアクションや言動がアンマッチだったこともあり、なかなか悪い印象を持たれたキャラクターではあるが、興味深いのは、戦後の空気感になんとなく彼女の“空気の読めなさ”のようなものがマッチしつつあることだ。それはようやくみんながホッとして、笑顔になりやすいささやかな日常を取り戻したからでもある。小夜が何か“小夜らしい”ことをしても、スズ子も愛助もみんな笑って受け止められるようになった。特に宝くじを巡るエピソードでは、戦後たくさんのものを失った庶民の者たちが抱いた淡い夢を体現するキャラクターとして小夜が輝いていた。

 そこで出会った、アメリカ兵のサム(ジャック・ケネディ)との逢瀬を重ね、最初はやはり疑いから入ったものの小夜は“ようやく”恋を知った。周りが下手だと笑う歌と踊りを「素晴らしい」と茶化さず褒めるサムとの時間が、本当は憧れの福来スズ子のような歌手になりたかった小夜の夢や希望を思い出させたのかもしれない。彼女がスズ子の付き人を辞めた理由はまだハッキリと本人の口から説明されていないが、サムとの時間を優先して仮病を使うなどちゃんと雇い主のスズ子へ向き合うことができなくなったことへの負い目や、付き人を続けることで“何者にもなれない”ことと、サムから向けられる視線によって“何者かになれている”感覚の違いに気づいてしまったからかもしれない。

 いずれにせよ、付き人を辞めた小夜の物語は第16週で一つの区切りを迎えそうだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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