『ブギウギ』富田望生演じる小夜の変化と今後の行方 なぜスズ子の付き人を辞めたのか
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』も戦後の空気感が定着してきた。朝ドラの中では長い期間描かれてきた戦争だったが、戦時中も戦前もスズ子(趣里)を支えてきたのは他でもない小夜(富田望生)である。
初登場の時から、小夜は些か“ラウド”な少女として描かれてきた。クセの強い態度や話し方は視聴者を驚かせ、時には失礼な行動で困惑させた。本作の主役であるスズ子も強いキャラクターではあるものの、そんな彼女がむしろ大人になるきっかけにもなった登場人物だろう。
弟子入りを希望し、一旦断られるも食い下がり付き人になった。それだけでなくスズ子の下宿先に転がり込んだかと思うと、出会って間もないスズ子の父・梅吉(柳葉敏郎)を「父ちゃん」と呼んだり酔っ払って大騒ぎしたり、極め付けには「六郎の嫁になるのが夢」などスズ子にとって耐え難いセリフを吐く。この時点で、福島弁で赤ら顔のおぼこい少女は、意図的に「非常識でデリカシーのない田舎娘」として意図的に描写されていたように思う。スズ子が自分の出生を知った時のショック、そして立ち直る様子を見守ってきた視聴者からすると、彼女の言動は耐え難いものがあった。自分が足袋の中にお金を入れたことを忘れた時も、初対面の愛助(村上恒司)のことを疑うなど、失礼さが目立つ場面も。しかし、一方で付き人になることを申し出た時「金銭はいらない」と言ったり、六郎を失って心身が弱ったスズ子を抱きしめたりと本当に「福来スズ子」のことが好きであることは伝わるのだ。
そして忘れてはいけないのが、スズ子に出会うまでの小夜の人生が決して楽なものではなかったことである。福島の漁師の家に生まれ、兄姉が多いため口減らしのために12歳で奉公に出された小夜。奉公先の主人は酒癖が悪く暴力も振るう人間だった。もちろん、そんな奉公先のため辛い時期を過ごした小夜は、福来スズ子の歌を聴いて元気をもらっていた。詳細は伏せつつも「男の人に騙されてきた」体験もあり、そのため基本的に誰も信用しない、誰かを疑うところから人間関係を始めることに慣れてしまったように感じる。異性に対する警戒心の高さも、彼女の奉公先での経験を想像すると本当に酷かったことを物語っている。そして12歳の時から両親に会っていない小夜に、ちゃんとした言葉遣いや礼儀を教える者もいなかったのだろう。兄姉が多い環境で口減らしのために家から追い出された背景を考えると、家で育っていた頃から自分に目を向けられた機会も少なかったのではないかと感じる。実家でさえ彼女が孤独を感じる場所だったのだとしたら、今の小夜が歳の割に常識に欠け、会う相手全員に必要以上に噛み付くのもわからなくもないのだ。