『フェルマーの料理』高橋文哉&志尊淳の気迫ある演技を振り返る 岳と海の“共通点”も

『フェルマーの料理』高橋文哉&志尊淳の演技

 『フェルマーの料理』の海と岳には、それぞれの背景や経歴の違いがある。だが、2人に共通するのは「孤高」を極めたことだろう。岳に「孤高」と書いたコースターを渡した海は、ひと足先にその闇の中を経験していた。心から尊敬する人がいながら突然その人に姿を消されることになる上、自身の身に病が降りかかり料理人として大切な味覚さえ失いかけていたのだ。自分が頂点であるがゆえに誰の背中を追うこともできず、自分自身と向き合いながら模索し続ける苦しみと、そこを抜け出すまでの極限の世界こそが「孤高」なのだ。

 海がこの言葉を岳に送ったのは、自分がいなくても「K」を任せられる料理人を育てたかったという狙いもあったのだろう。第9話では、岳が神に挑み続け、なりふりかまわず料理を極めようとする中で、海には海の目指す領域があったことが明かされている。「孤高」を知る2人が最後に手を取り合うロマンに胸が熱くなった。

 そんな物語の中で、2人の俳優が見せた気迫はやはりドラマ最大の見どころとも言えよう。物語中盤までの岳は、暖かく柔和な人柄。誰よりも調理場の空気を重んじ、他のスタッフとも積極的に交流してきた。何事にもリスペクトを持ち、ひたむきに走れる人物でもある。そんな岳が大きく変貌し、「孤高」に蝕まれていく姿は痛ましかった。高橋は、取り憑かれたかのような狂気を細やかな表情と声色でつぶさに表現し、「K」が崩壊するまでの様子を生々しく見せてくれた。

 
 もう一方の海もまた、気迫と狂気の中で料理の道を極めてきたキャラクターだ。志尊の表現する勢いは高橋のそれとはまた違い、長いトンネルを1人静かに駆け抜けてきたかのような迷いのなさが感じられる。穏やかさとストイックさが同居した奇妙な調和が不穏な雰囲気を醸し、ドラマ全体にいい緊張感を与えていたようにも感じた。

 いよいよ最終回を迎える『フェルマーの料理』。2人は再び「K」の厨房に立てるのだろうか。岳と海の活躍を最後までしっかりと見届けなければならない。

■放送情報
金曜ドラマ『フェルマーの料理』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
U-NEXT、Netflixにて配信中
出演:高橋文哉、志尊淳、小芝風花、板垣李光人、白石聖、細田善彦、久保田紗友、及川光博、宮澤エマ、細田佳央太、宇梶剛士、高橋光臣、仲村トオル
原作:小林有吾『フェルマーの料理』(講談社『月刊少年マガジン』連載)
脚本:渡辺雄介、三浦希紗
プロデューサー:中西真央
演出:石井康晴、平野俊一、大内舞子
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/fermat_tbs2023/
公式X(旧Twitter):@Fermat_tbs
公式Instagram:fermat_tbs
公式TikTok:@fermat_tbs

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