『おむすび』制作陣が目指した“コロナウイルスへのリベンジ” 医療従事者たちへの敬意も

『おむすび』コロナウイルスへのリベンジ

 NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。

 1週間を通してコロナ禍が描かれた第23週。制作統括の真鍋斎は「ドラマの中で新型コロナ発生時の病院内をここまで描くのは、おそらく日本では初めてではないかという思いがありました。特に朝ドラというカテゴリーの中で踏み込むことに葛藤はありましたが、あれだけ国民全体、世界中が苦労したことを避けて通るのは嫌でしたし、これはいわゆるコロナウイルスへのリベンジだと。『描いてやろう』という覚悟で臨みました」と思いを語る。

 同じく制作統括の宇佐川隆史も「企画の初期段階から、平成をこえて、今を生きる私たちを描く上で、コロナ禍は非常に重要なテーマの一つになるだろうと思っていました。30年前の阪神・淡路大震災を伝えるのと同じように、『私たちはこういう歴史を踏んできたんだ』ということを描くべきだと感じていましたし、それによって次に繋がる何かを考えられるきっかけになるかもしれない。そういった意味でも、非常に意義深い週になったかなと思っています」と述べた。

 アクリル板、リモート通話など、コロナ禍の“あるある”が随所に描かれる中で、『おむすび』がスポットを当てたのは医療関係者に対する偏見。真鍋は「医療従事者の心をここまで追い込んでしまったものが、これまであっただろうかと。結はコロナ患者に直接関わる人間ではないですが、それでもいわれのない中傷を受けてしまう。その中でも、なんとか自分の矜持を保ち続けていく精神を一番に描きたかった」と、医療従事者に敬意を示した。

 病院におけるコロナ禍を描くにあたり、多くの取材を実施。結たちが患者に手紙を書く展開も実話に基づいたものだといい、「当時、管理栄養士さんは直接コロナ患者さんと対面することはなかったそうですが、特効薬がないのでとにかく免疫をつけなくてはいけない。人間の自己免疫だけが頼りということで、食事の大切さをあらためて訴えていたそうなんです。面会も許されない気持ちのケアも含めて、看護師さんとはまた違った角度から、食事を通していろいろな工夫をされていたと聞いて感銘を受けました」とエピソードの裏側を明かした。

 監修は、大阪で初めて新型コロナ専用病院となった十三市民病院の医師が担当。真鍋は「初めは混乱していたものの、やるしかないと。本当にドラマの中で描写したようにゾーニングをしたりと、手探りだったらしいです。それが後々正しかったのか、正しくなかったのかはさておき、医者として考えられる手を尽くしたという話を聞いて、職業意識の高さに感動しました。ドラマではセットなので撮影場所も限られていますが、演出の原田(氷詩)が工夫しながら、『一生懸命働いている医療従事者たちの奮闘をなんとか掴み取っていくんだ』という思いで撮影していました」と振り返った。

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