『下剋上球児』が放つ未来へのエネルギー　鈴木亮平が果たした下剋上の意味

　しかし、元木大介演じる監督が率いる伊賀商業も譲らず、満塁から追加点を奪って阪を攻略する。シーソーゲームは精神的にこたえるが、選手たちは戦う意欲に満ちていて、彼らの気持ちに応えるように、乾坤一擲の勝負に南雲はエースの犬塚翔（中沢元紀）を送り出した。準決勝で登板の機会がなかった翔は、壮磨との好連携でダブルプレーを取ってピンチをしのいだ。

　底辺から這い上がってきた強さ。失うものがなく、失ってきたからこそ得た自信。周囲から期待されず、それでも続けてきた彼らは、決勝の舞台で誰よりも自由に力を発揮できた。越山ナインにとって“正々堂々”はルールに縛られることではなく、ルールは熟知した上で勝負に徹する姿勢だった。かつて高校球児だった頃、賀門（松平健）の下で敬遠作戦を取ったことで後悔にさいなまれた南雲は、越山の生徒と甲子園を目指す中でトラウマを払しょくした。自身の弱さと向き合い、過去の自分に対して下剋上を果たした。

　甲子園出場を決めた県大会決勝で、越山の部員たちは誰よりも野球を楽しんでいるように見えた。悲願を達成した球児たちにとって、甲子園出場は夢の終わりではなく、次の舞台へ羽ばたくためのエネルギーをくれる場所となった。南雲が「負けてもそこで終わりじゃない。必ず次がある。次を目指している限り、人は終わらない」と語ったように、笑顔と涙、青春の汗に彩られた下剋上は、目の前が真っ暗な時でも前へ進もうともがく魂の発露であり、『下剋上球児』は全編を通して勇気そのものだった。

■放送情報
日曜劇場『下剋上球児』
TBS系にて、毎週日曜21:00～21:54放送
出演：鈴木亮平、黒木華、井川遥、生瀬勝久、明日海りお、山下美月、きょん（コットン）、中沢元紀、兵頭功海、伊藤あさひ、小林虎之介、橘優輝、生田俊平、菅生新樹、財津優太郎、鈴木敦也、福松凜、奥野壮、絃瀬聡一、鳥谷敬、伊達さゆり、松平健、小泉孝太郎、小日向文世
原案：『下剋上球児』（カンゼン／菊地高弘著）
脚本：奥寺佐渡子
プロデュース：新井順子
演出：塚原あゆ子、山室大輔、濱野大輝
編成：佐藤美紀、黎景怡、広瀬泰斗
製作：TBSスパークル
©TBSスパークル／TBS（撮影：ENO）
©TBSスパークル／TBS（撮影：Len）
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