『大奥』志田彩良演じる家茂のあまりに切ない最期 200年以上に渡る物語もいよいよ終幕へ
徳川家茂(志田彩良)が袿、和宮(岸井ゆきの)が打掛を着て、甘いものを食べる。2人の“とりかえばや”は実現しなかった。
家茂が志半ばで天に召されたNHKドラマ10『大奥』第20話。袖を通す人のいなくなったまっさらな袿に泣きすがる和宮の姿があまりにも苦しい。
かたや慶喜(大東駿介)は悼むべき主の死をあろうことか好機と捉え、対立する長州との停戦を申し出る。けれど、家茂ならきっと、この状況にほっと胸を撫で下ろしていることだろう。彼女はいつも、争いが起こるたびに平穏な暮らしを奪われる民衆のことを案じていたから。
そんな家茂にとって、朝廷と幕府の架け橋となる和宮の存在は“光”以外の何ものでもなかった。和宮のほうは母親である観行院(平岩紙)を独り占めしたい一心だったとしても、その存在が人々の心に安寧をもたらしたという事実に変わりはない。
だからこそ、家茂は和宮にかかる影を払ってあげたかったのだろう。最初の上洛で孝明帝(茂山逸平)の懐に入り込んだ家茂は開国の意義を説き、さらには観行院によって生まれたときから隠されていた和宮の存在を知らせる。それは、これからも和宮と夫婦でいるためでもあった。
公武合体、またプライドばかり高く、人望のない慶喜に次期将軍の座を受け渡さないためにも、家茂は側室との間に子を儲けて和宮との子とするのが得策ではあった。しかし、1年以上も脚気で月のものが来ていない家茂は、和宮との間に亀之助という養子を迎える。親の愛情というものを知らずに育った和宮は扱いに戸惑うが、「してほしかったことをして差し上げればいい」と言う家茂。
そんな彼女の存在は、和宮にとっても“光”だったに違いない。観行院が弟の元に帰った後も和宮がそう気落ちせずいられたのは、代わりに大きな愛情で包み込んでくれる家茂がいたから。表情も一段と明るくなり、家茂を健康のために散歩へ連れ出そうと草履まで進んで取りに行くようになった。