清光院の“ランデブー”は何を映してきた? 『ばけばけ』堤真一、寛一郎、下川恭平の役割

『ばけばけ』堤真一、寛一郎、下川恭平の役割

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』を観ていると、トキ(髙石あかり)がときどき「ランデブー」という言葉を口にする場面が出てくる。デートと言い換えることもできるその言葉を、トキが使ってきた相手は、雨清水傳(堤真一)、山根銀二郎(寛一郎)、小谷春夫(下川恭平)の3人だ。

 興味深いのは、3人ともトキを連れて行く場所が同じだということだ。怪談「松風」の舞台として登場する清光院である。年上の傳、同世代の夫・銀二郎、そして教え子世代の小谷と、一緒に石段を登る相手が変わっていくなかで、トキの受け止め方も少しずつ変化しているように見える。本稿では、堤真一、寛一郎、下川恭平との清光院でのランデブーを振り返ってみたい。

雨清水傳(堤真一)

 傳がトキを清光院に連れて行くのは、縁談の話が思うように進まず、トキが気持ちを落としているタイミングだ。傳は松江藩の武家の家に生まれ、髷を落として機織り会社を立ち上げた人物という設定になっている。由緒ある生まれでありながら、自分の判断で別の道を選んだ人でもあり、トキから見ると“親戚ではあるけれど少し距離のある大人”という立ち位置にある(後に実娘であることが明らかになる)。

 堤はこれまでも、組織や家族の中で責任を負う立場にいながら、ときどき肩の力が抜けた表情を見せるような役を多く演じてきた。『ばけばけ』の傳にも、その積み重ねが反映されている。清光院へ向かう道中では、トキが怪談好きであることをきちんと理解したうえで、「松風」の話題をあえて持ち出し、会話を重ねることで少しずつ気分を上向かせていく。一方で、その流れの中に縁談や今後の暮らしの話も自然に差し込んでいく。

 第7話の清光院のシーンでは、怪談の舞台に来られたことを素直に喜ぶトキと、その様子を少し距離を置いて見守る傳の姿が描かれている。堤の芝居は、あからさまな優しさを前面に出すものではないが、会社の経営に悩み、時代の変化に揺れている人物であることをにじませながら、それでもトキのために外へ連れ出す大人として描かれている。傳は物語全体で見ると、決して完璧な叔父というわけではなかった。それでも清光院の場面では、トキが怪談の話を気兼ねなくできる相手であり、初めてのランデブーの相手だった。

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