尾上松也×宮下兼史鷹がアメコミを語り合う “キャップ派”と“アイアンマン派”の違いも

尾上松也×宮下兼史鷹がアメコミを語り合う

『男はつらいよ』の寅さんは“日本のトニー・スターク”!?

(左から)宮下兼史鷹、尾上松也

ーーお互いにお勧めしたい作品は?

宮下:僕がお勧めしたいのは、原題が『The Bear』、邦題が『一流シェフのファミリーレストラン』というドラマです。高級レストランに勤めていた人が、安いファミレスの経営を引き受けて試行錯誤するっていう物語なんですけど、これは本当にお勧めしたい。注文が立て続けにくる、厨房の忙しい感じってあるじゃないですか。あれをほぼ長回しで撮るんです。だから、飲食店で働いたことがある人にとっては、ビックリするくらいリアルで圧倒されるんですよ。忙しくなればなるほど、みんな口が悪くなって場も険悪になっていくのが、めっちゃ面白いです。これが海外で流行った影響で、セレブが料理をし始めたっていう伝説があるくらい。個人的には邦題が微妙なんですけどね。

松也:なんで邦題って、ちょっと違う感じになることが多いんですかね。

宮下:『一流シェフのファミリーレストラン』って作品の雰囲気からしてもちょっと違うんですよ。あれは本当に『ザ・ベア』でよかった。ネタバレになるので詳しく言えませんが、「ベア」って言葉にすごく意味があるというか、作品中に感動する言葉として出てくるんです。逆に僕は、普段あまり邦画を観ないので、松也さんにおすすめを教えてほしいですね。

松也:難しいですね。邦画は僕もたくさん観るわけではないけど、観るとしたら昔の映画が多くて。東映時代劇とか観てほしいと思いますけど、もはや配信しているところが今はないんですよね。以前は毎年、市川右太衛門とか片岡千恵蔵とか、そういう映画スターが一堂に会するオールスタームービーを作っていたんです。『忠臣蔵』という同じ題材で年末年始にやるのが恒例で、その作りもほとんど歌舞伎みたいな感じなんですよ。歌舞伎出身の俳優も多いので観ていただきたいですが、今は観るハードルが少し高いんですよね。より近年の作品でいうと、さっき宮下くんが『アイアンマン』のスタークが好き、ダメな男が好きって話だったので、そういう方には絶対に観なきゃいけない作品があります。『男はつらいよ』です(笑)。

宮下:出ましたね!(笑)

映画『男はつらいよ』(第1作)予告編

松也:『男はつらいよ』の寅さんのダメ男っぷり、とてつもないですよ。スタークを超えるダメ男中のダメ男ですから。それでもスタークは世界を救うために頑張るじゃないですか。実は、寅さんも一生懸命頑張るんです。「日本のトニー・スターク」と言っても過言ではない、お金がなくてモテないスタークです(笑)。クズっぷりがすごいので本当に観てほしい。ひどいことしかしていないのに、みんなから愛されるという究極の男の物語ですからね。爆笑しますよ。特に、第1作は1ミリも飽きるところがない。

宮下:実は、太田プロには代々伝わっているんですよ。上島竜兵さんが『男はつらいよ』が大好きで、後輩に見せる伝統が脈々と受け継がれてきて、僕も平子(祐希)さん(アルコ&ピース)から勧められたことがあるんですけど、そう言われたら俄然気になりますね。

松也:全部で48作ありますけど、毎回全部寅さんが悪いです。ほぼほぼ彼のせいなんだけど、憎めないっていうか、彼が原因で迷惑を被るのに、結果的にみんなに愛されるんです。

宮下:にわかには信じられないですね。

松也:なぜかというと、トニー・スタークと同じで、そこに愛があるからなんですよ。愛情があるクズだからです。

宮下:なるほど、悪意はないんですね。

松也:全くない、だからスタークと同じなんです(笑)。自分に正直なだけなんです。とにかく第1作は本当に泣けます。ざっくりいうと、寅さんにはさくらっていう異母妹がいて、両親がいないんです。さくらは叔父さんの家に預けられていて、そこに18年ぶりに寅が訪ねてくる。そこでトラブルを起こして2、3日経ったら出ていくんです。それが前半で、妹の縁談も台無しにしてしまう。

宮下:ええ!? 僕、愛せるかなそれ……。

松也:さくらの恋人が寅さんに「妹さんが好きだ」と伝えたら、勝手に「妹はお前のことが好きじゃない」なんて言っちゃう。だけど最後には全部持っていくんですよ、このダメ兄貴が。もう本当に、自分勝手なのに愛されキャラなんです。

宮下:それは気になりますね(笑)。今まで、いろんな人に『男はつらいよ』を観てって言われてきましたが、一番響きました。すぐに観てみます。

■公演情報
新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』
日程:12月5日(火)~12月25日(月)
<昼の部>11:30開演
<夜の部>16:30開演
【休演】12月11日(月)、12月18日(月)
【貸切】12月13日(水)夜の部
会場:新橋演舞場
出演:片岡愛之助、尾上松也、市川笑三郎、市川笑也、市川中車 ほか
公式サイト:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/844

『新春浅草歌舞伎』
日程:2024年1月2日(火)~1月26日(金)
<第1部>11:00開演
<第2部>15:00開演
【休演】2024年1月8日(月・祝)、1月19日(金)
会場:浅草公会堂
出演:尾上松也、中村歌昇、坂東巳之助、坂東新悟、中村種之助、中村米吉、中村隼人、中村橋之助、中村莟玉
公式サイト:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/833

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