『ブギウギ』中越典子の眼差しに滲む苦労と懺悔 20年ぶりの朝ドラは粋な巡り合わせに

『ブギウギ』中越典子の瞳に滲む苦労と懺悔

 ヒロイン・スズ子(趣里)の出生の秘密が明かされた朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)。スズ子の実の両親は香川の地主で有力者・治郎丸家の亡き息子である菊三郎とそこで女中をしていた西野キヌ(中越典子)だった。

 わけもわからず向かわされた法事で、酔っぱらった治郎丸家の当主でスズ子の実の祖父にあたる和一(石倉三郎)から突然この事実を暴露されるという、かなり残酷かつデリカシーの欠片もない展開に見舞われる。その妻・ミネ(湖条千秋)と共に孫の中に亡き息子の面影しか見出さず、彼らの頭の中にはキヌのことは全くない。治郎丸家でキヌの存在はまるで透明人間かのようだ。

 スズ子のことをそっと物陰から眼差すキヌには積年の疲労や諦めと懺悔が滲み、ずっと長年自分の本音を心の奥底に沈め、一切の言葉を飲み込んできたのだろう重苦しい“沈黙”が漂う。わずかな登場シーンであの重々しい空気を一瞬にして醸し出せる、中越の存在感を見せつけられた。

 中越は『こころ』(NHK総合)でのヒロイン役に続き、本作が朝ドラ出演2作目。『こころ』では、伊藤蘭演じるうなぎ屋「きよ川」の若女将の娘役を演じた中越が、本作では伊藤の実の娘である趣里の母親役を務めるというキャスティングの面白さ、巡り合わせに想いを馳せる。

 さまざまな作品で母親役を演じている中越は、『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(フジテレビ系)では、仕事に忙殺され自身の健康面のことは後回しにしてしまい、無理をきたすシングルマザー役を熱演した。責任感が強く誰にも迷惑をかけまいと全てを自分ひとりで背負いこもうとする切羽詰まった様子と、それでも気丈に振る舞おうと凛と立っていようとする姿が印象的だった。

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