『SPY×FAMILY』は“令和のサザエさん”に? 現実との危ういバランスで成り立つ笑い
本作のバックボーンとなっているアメリカとソ連の冷戦を背景にした20世紀的世界観は、漫画配信がはじまった2019年の時点では、過ぎ去った過去だからこそ気軽に楽しめる「ファンタジーとしての20世紀」を描いているように感じた。
しかし、2022年にロシア・ウクライナ戦争が起こって以降、表向きは平和に見えるが、いつ戦争が起きてもおかしくない緊張感の漂う西国の描写に、妙な生々しさを感じるようになってきている。
たとえばアニメの第13〜15話で描かれたロイド家が爆弾テロを阻止するエピソードは、漫画で読んだ時よりも、シリアスな話に感じた。これは受け取る視聴者の側の現実が変質したことによる変化だが、漫画連載にもロシア・ウクライナ戦争の影響は滲み出ており、シリアスな気配が少しずつだが、漂い始めている。
2022年末に『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した芸能人のタモリが、「来年はどんな年になると思うか?」と聞かれ「新しい戦前になるんじゃないですかね」と答えたことが話題となったが、『SPY×FAMILY』を「新しい戦前」の家族を描いた作品だと考えると、とても腑に落ちる。
偽りの家族を演じるロイド家と同じように、作品自体も現実との危ういバランスの上でコメディとして成立している。この危うさも含めて、令和を象徴するファミリーアニメである。
■放送情報
TVアニメ『SPY×FAMILY』Season2
テレビ東京ほかにて、10月7日(土)スタート 毎週土曜23:00〜放送
出演:江口拓也、種﨑敦美、早見沙織、松田健一郎、吉野裕行、甲斐田裕子、山路和弘、小野賢章、藤原夏海、加藤英美里、佐倉綾音
原作:遠藤達哉(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:古橋一浩、原田孝宏
シリーズ構成:大河内一楼
副シリーズ構成:谷村大四郎、久尾歩
キャラクターデザイン・総作画監督:嶋田和晃
色彩設計:原恭子
美術設定:塩澤良憲、スタジオイースター
美術監督:臼井みなみ
3DCG監督:宮地克明
撮影監督:佐久間悠也
編集:齋藤朱里(三嶋編集室)
音楽プロデュース:(K)NoW_NAME
音響監督:はたしょう二
音響効果:出雲範子
制作:WIT STUDIO×CloverWorks
©遠藤達哉/集英社・SPY×FAMILY製作委員会
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