『葬送のフリーレン』『七つの大罪』が新枠で放送 テレビがアニメに力を入れる2つの理由

テレビがアニメに力を入れる2つの理由

ゴールデン帯のアニメ復活はあるか

 日本テレビやTBSのアニメ枠増設は、こうした不可逆の産業構造の転換を背景にしている。これまで深夜に集中していたアニメ放送をより、多くの人が観られる時間帯に持ってくるのも、(まだ)強いテレビのリーチ力を活かしてヒット作を生み出すことを企図しているのだろう。前述したように10月期だけで70本以上の新作アニメがあるので、各作品ともまずは視聴者獲得競争で優位に立たねばならない。浅い時間帯に放送できることには大きなアドバンテージがある。

 『葬送のフリーレン』の23時台という放送時間は、『「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』とほぼ同じ時間帯だ。テレビ東京は10月からの『SPY×FAMILY』シーズン2を同じく23時台に放送する。各局期待の作品は23時台に放送することがデフォルトになるかもしれない。

 テレビをリアルタイムで観る人間は確実に減少しているが、それでも配信にはない強みとして同時間帯に一斉に同じものを観て盛り上がりを作れるという強みは失われていない。近年のテレビアニメでこうしたリアルタイム視聴の盛り上がりが作品人気に貢献した例は『機動戦士ガンダム 水星の魔女』だろう。毎週放送時間に関連キーワードがX(旧Twitter)のトレンドに入り続けた同作品は、テレビの力でトレンドが作れることを証明している。トレンドになれば、後からその話題を聞きつけた人も配信で観るようになり、視聴層を拡大していけるし、今の時代そうした情報はグローバルに拡散される。Netflixなどの独占配信タイトルは、これができずに苦しんでいる部分がある。

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2 クライマックスPV

 アニメの放送時間は、アニメの事業構造に大きく左右される。かつてゴールデン帯にアニメが放送されていたのは、どの世帯にも子どもがいたから、玩具メーカーなどを中心にスポンサーがつきやすかったからだ。少子化が進んだ現在、世帯のあり方も多様化しているが、かつてとは別の理由で再びアニメをテレビ局が求めるようになってきているわけだ。もしかすると、ゴールデンタイムにアニメが再び放送される時代もあり得るかもしれない。ゴールデンは19時~22時、プライムタイムは19時~23時までを指し、特に在宅率の高い時間帯でテレビの花形となる時間帯だが、『葬送のフリーレン』の放送時間はプライム一歩手前だ。

 スポンサーも世帯視聴率よりコア視聴率(コア層と呼ばれる13歳〜49歳までの男女の個人視聴率)や見逃し再生数を重視する傾向になっている。アニメはコア層にも強いことを考えれば、ゴールデン帯に放送してもおかしなことではないだろう。

参照

※1. https://mediaborder.publishers.fm/article/27328/
※2. https://branc.jp/article/2023/09/05/721.html
※3. https://branc.jp/article/2023/01/27/281.html

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