『らんまん』浜辺美波が体現した寿恵子の人生の重み ヒロインとしてハマった朝ドラの構図

『らんまん』で浜辺美波が体現した人生の重み

 世間で広く認識されはじめた頃から、浜辺美波はスターだった。彼女がその名を知らしめたのは、やはり北村匠海とダブル主演を務めた『君の膵臓をたべたい』(2017年)だろうか。

 同作に出演以降、数々の作品で主役級の役どころを担い、エンターテインメント界を盛り上げることに貢献してきた。そんな浜辺がヒロインを務めた朝ドラ『らんまん』(NHK総合)がいよいよ終幕を迎える。今作にて彼女は大飛躍を果たし、俳優として次なるステージへと進んだのではないだろうか。

 本作で浜辺が演じたのは、植物学の道を歩む主人公・槙野万太郎(神木隆之介)の妻である寿恵子。万太郎がはじめて東京を訪れた際に彼から一目惚れされた和菓子屋の看板娘だ。万太郎と交流していくうちにやがて相思相愛となり生涯をともにするパートナーに。万太郎のことを一人の人間としてリスペクトし、資金繰りのために東奔西走する彼女は間違いなく彼の最大の理解者である。これはつまり、主演の神木隆之介がどれだけ素晴らしい万太郎像を立ち上げることができたとしても、それだけでは作品の成功にまでは至らないということだ(もちろんこれは、参加しているすべての俳優にいえることだ)。

 万太郎は優れた才能の持ち主だが、完璧な人間ではない。いや、むしろ抜けているところも多い。そんな彼の足りないものを補うのが、寿恵子像を立ち上げる者の役目なのだ。若い頃の寿恵子もまた“らんまん”という言葉が似合う女性だったが、彼女が年齢を重ねるたび、そして経験を重ねるたび、これを演じる浜辺のパフォーマンスは変化していった。私たちの誰もが社会生活を送るうえで自然と変化していかなければならないのと同じように。

浜辺美波と北村匠海の見事な掛け合い――『君の膵臓をたべたい』で見せた瑞々しさとひたむきさ

『君の膵臓をたべたい』は、よく揶揄されてしまいがちな“難病もの映画”ではない。ヒロインである山内桜良(浜辺美波)は、主人公の僕(…

 浜辺が朝ドラに参加するのは二度目のこと。いまから8年前に放送された『まれ』(NHK総合)での出番はごく限られたものだったため、いずれヒロインを務めるに違いないと誰もが思っていたのではないだろうか。そうだ、それこそ『君の膵臓をたべたい』のヒット以降はこの思いが確信に変わっていた。ところが、ヒロインはヒロインでも、浜辺が務めるのは主人公の相手役としてのヒロインポジション。個人的には意外性を感じたものだが、結果的にこのポジションがベストだったのではないかと思う。

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