『らんまん』浜辺美波が体現した寿恵子の人生の重み ヒロインとしてハマった朝ドラの構図

『らんまん』で浜辺美波が体現した人生の重み

 その理由は“朝ドラの構図”にある。基本的に朝ドラとは、主人公/ヒロインが周囲の人々に支えられ、精神的な成長を遂げていくものだ。つまり、心の内側が開示される主人公/ヒロインは、視聴者にとってもっとも愛すべきある種の弱さを持った人物。今作では万太郎からいくつもの弱さを見つけることができただろう。だからこそ、彼の一番身近な人物はある種の強さを持っていなければならない。寿恵子からいくつもの強さを見つけることができたのは筆者だけではないだろう。

 これまでの浜辺といえば、若年層に支持される作品への出演が多く、この数年だと『センセイ君主』(2018年)、『賭ケグルイ』シリーズ(2019年〜2021年)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020年)、『約束のネバーランド』(2020年)などがパッと思い浮かぶ。マンガを原作とした作品への出演も多く、ファンタジックな設定の場合、浜辺の演技も必然的に現実からかけ離れたものとなる。するとどうしても、各キャラクターの人生の重みのようなものが欠けてしまうことにもなる。現実を生きる強さの欠如といえるかもしれない。

 寿恵子だけにフォーカスしたとしても、『らんまん』もまたファンタジーといえばファンタジーだ。実際には20代前半の浜辺が、孫までいる高齢者を演じているのだから。しかし、白髪の目立つ寿恵子にはかつての少女の面影はもうなく、それでいて彼女の言動には無理がない。朝ドラの難しさの一つは、“老い”の表現だ。どれだけ芸達者な若手でも、これには苦戦するものだと思う。自身が経験したことのない年齢の人間を演じるのは容易ではないに決まっている。けれども浜辺が演じた寿恵子には、前提として万太郎のパートナーというポジション(=役割)があった。万太郎の人生の波に合わせて、彼女自身も変化するのだ。役を表現してみせたというよりも、浜辺は与えられた状況に“適応してみせた”というほうが正確なように思う。

 “浜辺美波=寿恵子”はずっと強かった。浜辺が体現するに至った一人の女性の人生の重みは、彼女の今後の俳優人生にも活きてくるに違いない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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