『らんまん』綾と竹雄のまっすぐで美しい歩み 佐久間由衣&志尊淳に最大の賛辞を贈る
綾にとって最初は全く眼中になかった竹雄だが、万太郎同様に“女だから”“決まりだから”とそんな一側面だけで、綾の好奇心や酒造りへの本気度をなだめたり誤魔化したりしない彼の真っ直ぐさは、いつだって彼女の大きな支えとなっただろう。
「あなたは呪いじゃない、祝いじゃ。酒蔵におるがが女神じゃいうがやったら、あなたこそ峰屋の祝いの女神じゃき」「わしはそういう女神様に欲しがられたいがじゃ」という竹雄の言葉は本心から出た最上級の愛情表現とリスペクトで、これまで理不尽な環境下でも腐らず取り組んできた綾の頑張りを見守り続けてきた彼にしか言えない言葉だった。尊敬と愛情を矛盾なく同居させられる竹雄の器の大きさは見事だ。
綾の夢を叶えることが、その実現を一番近くで見て一緒に喜ぶことが自分の望みだという竹雄の覚悟は常に揺るがない。綾が当主になってからも重くのしかかる酒税に苦しめられたり、火落ちを出してしまい廃業に追い込まれた時にも、しーんと静まり返った酒蔵同様に空っぽになってしまったかのような綾の隣にはいつだって竹雄がいた。竹雄がいるからこそ、綾はきちんと傷つくことができて、だから立ち直ることだってできたのだろう。
太陽のような綾の求心力と人を動かす言葉の力強さ、そして大切な人の情熱を静かに照らし続け外圧から守り抜き、ずっとその火種が絶やされてしまうことがないようにと薪を焚べ続けてきた竹雄の迷いのなさと月のような穏やかな安心感、この2輪のバランス感が本当に絶妙だった。2人が手を取り合って、今度こそ自分たちが納得できる新しいお酒が作れることを切に願う。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK