『最高の教師』“2周目の人生”の九条に訪れた結末 『3年A組』と重なるクライマックスに

『最高の教師』2周目の人生の結末

 9月23日に最終話を迎えた『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)。前回のエピソードで鵜久森(芦田愛菜)の死にまつわる真相が明らかにされ、物語は一気に卒業式――すなわち第1話の冒頭で描かれた、九条(松岡茉優)が1周目の人生で生徒と思しき“誰か”に突き落とされたあの日へと向かっていく。ちなみにそこに至るまで、机の上に花を手向けながら鵜久森の死と向き合い続ける3年D組の生徒たちが描かれるわけだが、復学した西野(茅島みずき)が持ってくるカモミールの花には、「謝罪」や「仲直り」の意が込められているそうだ。

 卒業式の日が刻一刻と近付き、鵜久森が死の直前に残したビデオレターで語っていた「自分に明日が来る実感がない」という言葉を実感するようになる九条。そんな彼女に対して夫の蓮(松下洸平)は、つぶあんかこしあんかという他愛もない話や、2人で過ごす未来の計画などを話し続けながら、生きている実感を与えようとする。そんななか迎える卒業式の日。あの新校舎の吹き抜け廊下に立つ九条のもとに、ひとりの生徒がやってくるのである。

 その生徒とは、クラスメイトたちが感情をあらわにしてきたなかで、1人だけどこか他人事のように無感情でその様子を見ていた星崎(奥平大兼)。九条は1周目で突き落とされた時、その人物の顔がまったく見えなかったことから、事故でも故意でも突き落とした様子を確認してしまうという人間の無意識的な行動が伴わない可能性のある生徒として、星崎に疑惑の目を向けていたという。なんにせよ、視聴者の多くがこのドラマを観ながら考察を進めるにあたって星崎が最も怪しいと思っていたはずで、彼の登場に関しては大方の予想通りといったところだろうか。

 それでも、なぜ彼が凶行に及ぶのかという動機については、これまでの彼の行動――九条の映画を撮りたいとカメラを回したり、自ら焚き付けた浜岡(青木柚)が学校に潜り込んでいる監視カメラ映像を東風谷(當真あみ)に見せたり――から考えても不可解な点が多かった。ここで星崎の口から語られるのは、自分のことをおかしな人間だと思い続けて生きてきたことと、そこから派生するようにして感情が喪失していったこと。周りが変わっていくなかで、なぜ自分だけが変わることができずにいるのか。つまり、これまでD組の生徒たちの様々な問題と向き合ってきたこのドラマが最終的に行き着いたところは、周囲の人間との関わり方以上に、最も喫緊の課題となりうる“自分自身”との関わり方だったというわけだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる