『ハヤブサ消防団』川口春奈演じる彩が明かした教団の真相 太郎との“理想の世界”へ

『ハヤブサ消防団』彩が明かした教団の真相

 筆者はなぜ、太郎が移り住んだ「桜屋敷」に展子の写真が残っていたのかが気がかりだった。展子の写真は、写真が趣味だったという太郎の父親が30年前に撮影したものだ。それは回想にある映子と過ごした、余命わずかな展子の姿。彩のアビゲイルの呪いを解いたのは、聖母として崇めるのではなく、1人の人間として彩と向き合った太郎の思いにほかならないが、儀式に向かう彩に「カメラマンさん、なんですね。よかったら、私も1枚撮っていただいてもいいですか?」と声をかけた展子でもある。

 つまりそれは30年前の展子の幻想。土地の記憶、という表現がぴったりくるだろうか。どこまでが太郎の父への言葉なのかは定かではないが、「私がハヤブサにいた証を残したいんです。本当はずっとここにいたいけど、それは叶わないから。でも、きっと同じようにこの土地を愛する人たちが守ってくれますよね? 一つの家族のような、このハヤブサを」とかつての展子は彩に語りかける。

 『ハヤブサ消防団』は太郎にとっての大切なハヤブサ、そして彩を取り戻す物語であるが、彩にとってもハヤブサと太郎は大切な存在になっていたのは事実だ。彩は拘置所にいるため、太郎が町おこしドラマ『探偵ハヤブサの事件簿』を一緒に観ることはまだできない。けれど、“恋の蛍”が灯ったあの夜に約束した、静かに時間が流れる何気ない毎日はもうすぐ。それがきっと2人にとっての“理想の世界”なのだから。

■配信情報
『ハヤブサ消防団』
TVer、TELASA、テレ朝動画、ABEMAにて配信中
出演:中村倫也、川口春奈、満島真之介、古川雄大、岡部たかし、梶原善、橋本じゅん、山本耕史、生瀬勝久、麿赤兒、村岡希美、小林涼子、金田明夫、大和田獏
原作:池井戸潤『ハヤブサ消防団』(集英社)
脚本:香坂隆史
演出:常廣丈太(テレビ朝日)、山本大輔(アズバーズ)ほか
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:飯田サヤカ(テレビ朝日)、木曽貴美子(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作協力:MMJ
制作著作:テレビ朝日
©テレビ朝日

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