落語好きの東京ホテイソン たけるが語る『にんげんこわい2』 「新しい見え方になるのでは」
WOWOWにて放送・配信中の連続ドラマW-30『にんげんこわい2』は、実は怖い話の多い落語の演目を原案とし、人間のさまざまな欲望が引き起こす物語をオムニバス形式で描く新感覚ドラマ。描かれる演目は、『紙入れ』『品川心中(上・下)』『鰍沢(かじかざわ)』『権助提灯』『笠碁』の5つ。吉田羊、吉岡里帆、岡田将生、安田顕、松重豊、伊東四朗ら豪華役者陣が、視聴者を今まで見たことのない落語の世界に引き込む。そんな本作の魅力を、備中神楽(びっちゅうかぐら)や講談など様々な伝統芸能を学ぶ、お笑いコンビ・東京ホテイソンのたけるに語ってもらった。
「時代劇や落語にあまり親しみがなかった人たちも楽しめる」
――『にんげんこわい2』全エピソードをご覧になって、いかがでしたか?
たける:めちゃくちゃ面白かったです。落語を映像化した作品は観たことがあったけれど、今回は出演されている皆さんがとにかく豪華で、映像としての充実感がありましたね。すごく楽しかったです。
――特に好きなエピソードは?
たける:第1話『紙入れ』と第5話『権助提灯』です。どちらも落語で聴いたときは、笑いの要素がふんだんに盛り込まれたポップな作品だと思いました。でも、『にんげんこわい2』の中では、まったく違ったものに見えたんですよ! そこに面白さがありましたね。
――それは気になります。
たける:落語は聴く人によって情景の浮かべ方が変わるけれど、映像ではみんなが同じ景色を観ることになります。この描写の世界観はこんな感じになるのだと、すごく新鮮な気持ちになりました。
――では『権助提灯』は、想像とどこが違いましたか?
たける:主人公の権助がもっと若い人だと想像していました。だから安田顕さんの演じる権助は、僕が思うよりもちょっと年上でしたね。でも安田さん自身は、すごく権助っぽいんですよ。実際に落語家さんたちが表現する権助も、あんなふうに抜けたところがある人物なんです。そこはぴったり雰囲気が合っていましたね。
――役者さんは本当に豪華でした。
たける:すごかったです。中でも第4話『鰍沢(かじかざわ)』の岡田将生さんの存在感が印象的でした。とにかく1エピソードごとに有名な役者さんが出てきて、ビックリしましたね。
――この役者陣だからこそ、いっそう引き込まれるというのはありましたよね。
たける:めちゃくちゃあると思います。たとえ落語に馴染みのない方でも、知っている役者さんが出ていれば見やすくなることは絶対あると思うので。時代劇や落語にあまり親しみがなかった人たちも楽しめるんじゃないかな。
――『にんげんこわい2』ではアレンジされて描かれていた部分もあったと思います。
たける:筋書きは大きくは変わらないけれど、オチだったり、作品を表現する視点が変わっていました。どの作品も“人間が怖い”という捉え方で描いているから、もとの落語とは違う話にも見えてくる。それこそ第2〜3話『品川心中(上・下)』は、この角度から見たら怖くなるんだと新鮮な気持ちになりました。
――『笠碁』はもともと人情噺だけれど、だいぶ雰囲気が違いましたね。
たける:めちゃくちゃ怖く終わりましたよね。ああいう終わり方だと、もう違う作品のようにも感じられました。『鰍沢』も同様です。タイトルだけで想像していた物語とはまったく違いましたね。僕が聴いた落語のほうでは、帰宅した旦那さんが卵酒を見つけて「俺も飲ませてくれ」と飲んだら、それに毒が入っていて……というあらすじ。『にんげんこわい2』では少し違っていたので、落語を知っている人からしたら“新しい落語”を見ているような感覚になるんじゃないかな。僕も元の作品を知っているけれど、新鮮な気持ちで楽しめました。
――落語ファンが観ても楽しめるということですね。
たける:落語家さんの場合は、その人の色だったり持ち味で落語が面白くなる。ほかにも、落語を聴いた人が何を思い浮かべるかで受け取り方が変わってくるので、聴く側に委ねられる部分も大きいですよね。でも映像となると、想像する部分は既に目で見えている状態です。これは落語好きな方たちにとって、かなり新しい見え方になるのではと思いました。
――たしかに、おっしゃる通りです。