英国ではシャーロック・ホームズに並ぶ人気刑事!? 愛すべきエンデバー・モースの魅力

『刑事モース』シリーズ、愛すべきモースの魅力

 英国の人気推理作家コリン・デクスターによる『モース警部』シリーズのドラマ化作品『主任警部モース』。1987~2000年に英国ITV系にて放送され大ヒットを記録した、このドラマの主人公モースは、本国でシャーロック・ホームズと人気を二分する名推理のキャラクターとして知られている。そのモースの若かりし日々を描いた『刑事モース』シリーズが2012年から製作され、同じくITV系にて放送されると、瞬く間に人気を呼び、本家同様、大ヒットドラマに成長。9シーズン続くロングランとなり、ついに2023年3月に惜しまれながらフィナーレを迎えた。

 その最終章が、日本ではどこよりも早くWOWOWにて初公開されるが、WOWOWオンデマンドでは、これまでの『刑事モース』シリーズを全話視聴することができる。全シリーズのエピソード数は36話。見始めたら止まらなくなる『刑事モース』シリーズの魅力をお伝えしたい。

モースは「英国で最も好きな探偵」第1位に選ばれた大人気キャラクター

『新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』©️ITV/Mammoth
『新米刑事モース~オックスフォード事件簿~』©️ITV/Mammoth

 『モース』シリーズの著者、コリン・デクスターはCWA(英国推理作家協会)ゴールドダガー賞を受賞した本格ミステリーの名手。デクスターが生み出したモースは、CWA会員による投票で「英国で最も好きな探偵」第1位に選ばれたことがあり、その人気はシャーロック・ホームズやエルキュール・ポワロに匹敵する。

 原作シリーズでは当初、名前が「E.モース」としか分からなかったが、後にモースの父親が英雄視していたジェームズ・クックの乗艦「エンデバー号」が由来のファーストネームであることが判明。若かりしモースを描く『刑事モース』シリーズの原題は、そのものずばり『Endeavour』で、新米刑事であるエンデバー・モースがどのような経験を積んで、『主任警部モース』の主人公になっていくのかが綴られていく。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』©︎Mammoth Screen Limited 2022 All Rights Reserved
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』©︎Mammoth Screen Limited 2022 All Rights Reserved

 モースは、クラシック音楽、詩、クロスワードパズルをこよなく愛し、酒と女性にハマりやすい、人間臭い人物。ホームズのような完全無欠の天才探偵ではないが、天才的なひらめきと、鋭い推理力と観察力、そして自由な発想で難解な謎を解いていく、魅力的な人物だ。

 ショーン・エヴァンスが演じる若かりしモースは、線の細い影のある雰囲気の男性。草食系男子のような見た目ではあるが、その見かけとは裏腹に新米刑事の頃から、女性に惚れたり惚れられたりすような描写も多い。お酒に溺れたり、推理を見誤ったりすることも。人間味のあるキャラクターであることも、愛され続ける理由の一つだと言えるだろう。

視聴者を惹き付けるモースの人物描写

『最後の刑事モース~知られざる舞台裏~』© ITV Studios Limited 2023
『最後の刑事モース~知られざる舞台裏~』© ITV Studios Limited 2023

 『刑事モース』シリーズは、始まってすぐにモースが優秀な名推理の刑事であることが描かれているが、その人物像は非常に複雑だ。幼少期に母親を失って心に傷を負い、大人になっても喪失感は薄れず、お酒に溺れることが多い。何度もつらい目に遭ったために、人との距離を置くようになってしまい、惚れっぽいのに独身を貫いている。他者と深い関係を持たないことで自分を守っているモース。

 そんな若かりしモースを、主演のショーン・エヴァンスが好演し、人気英国俳優として名を馳せるようになった。彼は番組のプロデューサーにも名を連ね、シリーズを通して4エピソードの監督も務めている。

 エヴァンスが演じるモースは、とても素敵だ。彼は事件の捜査などで知り合った女性とすぐに良い感じになるが、どこか近寄りがたい面がありながら、実は心優しい男性なので、女性を惹き付けて止まないのだろう。

『刑事モース~オックスフォード事件簿~』©︎Mammoth Screen Limited 2022 All Rights Reserved
『刑事モース~オックスフォード事件簿~』©︎Mammoth Screen Limited 2022 All Rights Reserved

 若きモースの才能を見出したフレッド・サーズデイ警部補(ロジャー・アラム)は、自分の補佐にモースを抜擢し、教育しながら彼の面倒を見て、一人前の刑事として成長できるように常に見守っていく存在となる。『刑事モース』シリーズでは、サーズデイの家族のエピソードも度々取り上げられ、モースも彼らに深く関わっていくなど、個性豊かな登場人物たちの描写が際立ち、人間ドラマとしての面白さも満載だ。

 また、『主任警部モース』に登場していた、モースを取り巻くキャラクターの「若い頃はこんな風だったのか」という小ネタ的な描き方も楽しい。ストレンジ警視正は、『刑事モース』シリーズではまだ未熟な巡査だが、警察医のマックスはすでに非常に優秀で、的確な検死を行ってモースたちの捜査を助けている。

 Case1で、サーズデイに「想像してみろ、20年後の自分はどうなっているか」と聞かれたモースが車のフロントミラーを覗き込んだ時、そこに『主任警部モース』のモース役のジョン・ソウが映るという演出も心憎い。

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