DC映画『ブルービートル』、『バービー』抑え北米No.1 ストライキの影響が興行収入を直撃

DC映画『ブルービートル』北米No.1

 とうとう『バービー』が北米映画週末ランキングの首位を譲った。8月18~20日の3日間で新たなNo.1に輝いたのは、DC映画『Blue Beetle(原題)』。ラテン系スーパーヒーロー史上初の単独映画で、宇宙のテクノロジーを宿す「スカラベ」を拾った青年ハイメ・レイエスが、青いアーマーをまとうブルービートルとして活躍する物語だ。

 本作は北米オープニング興行収入2540万ドル、海外初動興収1800万ドルで、現時点での世界累計興収は4340万ドル。北米では2800万~3200万ドルとの事前予測があったため、残念ながらワーナー・ブラザース側の期待には届かなかった。1億ドルの製作費を鑑みても厳しいスタートだが、『ブラックアダム』(2022年)や『シャザム!~神々の怒り~』(2023年)、『ザ・フラッシュ』(2023年)などDC映画の興行的低迷は続いており、単純にこの一本だけで判断することはできないだろう。

Blue Beetle – Official Trailer

 そもそもブルービートルは、スーパーマンやバットマンのようにDCコミックスで知名度の高いヒーローではなく、また別の作品で顔見せを済ませていたわけでもない、正真正銘のニューカマー。その一方、DCユニバースは全面刷新を直後に控えており、従来からのファンでさえ「是が非でも劇場に足を運ぶ」というモチベーションが生まれにくい(『ザ・フラッシュ』や『シャザム!~神々の怒り~』もこのことが不振を招いたと考えられている)。むろん、後述するWストライキとハリケーンの影響を無視することもできないだろう。

 ポジティブな側面を探るなら、映画館での出口調査によると、本作は観客の39%がラテン系(たいていの作品は30%前後といわれる)という結果を出しており、初のラテン系スーパーヒーロー映画、主なキャスト&スタッフをラテン系で固めたハリウッド大作としての役目を果たした。Rotten Tomatoesでは批評家スコア76%・観客スコア92%と反応も上々。出口調査に基づくCinemaScoreでは「B+」とやや伸び悩んだが、『コブラ会』(2018年~)のショロ・マリデュエニャ主演、新鋭アンヘル・マヌエル・ソト監督という注目のタッグは一定の評価を得たことになる。

 
 
 
 
 
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 DCスタジオCEOのジェームズ・ガンは、ブルービートルが今後のDCユニバースでも大きな役割を担うとアピール。口コミ効果の追い風を受け、ここから興行的なポテンシャルを花開かせることはできるか。日本公開は未定、こちらの動向も気にかかる。

『スラムドッグス』©UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

 また、今週の第5位にはR指定の動物コメディ『スラムドッグス』が初登場。飼い主に捨てられた犬たちが復讐を企てるストーリーで、ウィル・フェレルやジェイミー・フォックスをはじめ、アイラ・フィッシャー、ランドール・パーク、ジョシュ・ギャッド、ウィル・フォーテといった人気俳優&コメディアンが声優・実写キャストに結集した。

 ところが、本作は製作費4600万ドル、劇場数3223館というスケールに対し、北米初動興収は830万ドルと厳しいスタート。第4位『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』に僅差で敗れた(数値の確定時に逆転する可能性はある)。海外興収も198万ドル、世界累計興収1028万ドルと同じくシビアな滑り出しとなっている。

 『スラムドッグス』にも、『Blue Beetle』と同じく業界的な背景があることを押さえておきたい。現在、実写のコメディ映画は興行的な居場所を失いつつあるのだ。コメディ要素を含むスーパーヒーロー映画やアニメーション映画はヒットすることもあるが、いわゆる中・小規模のコメディ映画や喜劇的な人間ドラマは十分な成績をあげられず、配信作品としてリリースされることも少なくない。本作もRotten Tomatoesで批評家55%・観客73%、CinemaScoreでは「B+」評価と、実にブラックコメディらしい賛否の分かれ方。それだけに、興行が今ひとつふるわないことが惜しまれる。

 さらに『Blue Beetle』と『スラムドッグス』の厳しいスタートの背景には、全米脚本家組合(WGA)と全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキがある。『MEG ザ・モンスターズ2』や『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』などと同じく、これら2作品もストライキの影響により十分なプロモーションを実施できなかった。

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