『こっち向いてよ向井くん』はキャラクター造形が見事 “リアルさ”が生む物語への求心力
男女の恋愛や結婚に対する価値観を多彩に描いている『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)。元カノを忘れられない35歳サラリーマンの向井くん(赤楚衛二)の前に真打ちである元カノ・美和子(生田絵梨花)が登場し、今後の展開から目が離せないところ。
そんな本作を作り上げている要素として欠かせないのが、原作漫画を飛び出したかのように魅力的なキャラクターたちだ。主人公の向井くん、美和子、洸稀(波瑠)はもちろん、麻美(藤原さくら)、元気(岡山天音)、そして多彩なゲストキャラクターたちが作品を盛り上げている。
第1話では、かわいさと綺麗さを両立させる中谷さん(田辺桃子)、第2話ではあざとさ全開で向井くんを惑わせたアンちゃん(久間田琳加)など、各話で登場するキャラクターたちは異なる魅力を見せている。今回はストーリーを振り返りながら、キャラクターと俳優の芝居の魅力を紐解いていく。
中谷真由(田辺桃子)
第1話で登場した中谷さん。向井くんの会社に派遣社員として登場した彼女は、跳ねるような仕草や思わせぶりな目線で、向井くんに対して好意があると誤解させてしまう。しかし、向井くんが気付いていないところで後輩の河西(内藤秀一郎)との仲を深めており、むしろ向井くんのことを恋路を邪魔する存在として見ていた。意味深な目線や仕草からは、その意味を想像したくなってしまう。
そんな中谷さんを田辺桃子が演じることで、守りたくなるかわいらしさと清楚さを兼ね備え、向井くんにとってちょっと気になる女性としての存在を確立させていた。最後にパジャマ姿で友人に恋愛相談をする姿は、等身大のアラサー女性そのもの。中谷さん側の想いをナチュラルに語る姿は、『こっち向いてよ向井くん』のストーリーに視聴者をグッと引き込んだ。
羽鳥アン(久間田琳加)
第1話から登場し、第2話で“主役”となったアンちゃん。向井くんの義弟・元気のカレー屋でアルバイトとして、働く彼女は、天真爛漫な笑顔とあざとさで向井くんを惑わせていく。向井くんはアンちゃんに恋心を寄せられるも、展開の早さについていけず……。向井くんが、改めてアンちゃんに向き合おうとした時にはすでに遅く、アンちゃんは別の男性と恋仲になっていた。あざとさと若さ全開の女性として登場したアンちゃん。甘さのある笑顔と無邪気な行動で向井くんを惑わせた。
演じた久間田琳加のあざとい表情や意味深な言葉になんとも心を掴まれてしまう。流されるようにキスしたり、速すぎるLINEにも頑張って返信する向井くんの行動もうなづける。
原チカ(藤間爽子)
第3話で登場したチカさん。過去に向井くんと身体の関係をもったことがあり、それがきっかけで向井くんに連絡をしてきた彼女。チカさんは、向井くんに結婚を前提に付き合おうと提案し、婚活に焦るあまり結婚生活についてあれやこれやと議論を持ちかける。付き合うところまでいったものの、結婚に向けて歩む速度の違いから別れることに。
演じたのは、『silent』(フジテレビ系)で主人公の友人・真子役をナチュラルな芝居で好演していた藤間爽子。飾らない雰囲気を持つ彼女が演じることで、逆に結婚への焦りが際立ち、チカさんの葛藤が見事に表現されていた。