『こっち向いてよ向井くん』が共感を集める要因とは 説得力を生み出す波瑠の“繊細さ”

『向井くん』共感を呼ぶ要因は波瑠の演技に

「“女の子”なんて人格はないの」
「相手が投げてきたボールをただ受け止めてるだけ。投げ返しなよ、向こうはキャッチボールがしたいんだよ」

 『こっち向いてよ向井くん』(日本テレビ系)で坂井戸洸稀(波瑠)が放つ痛快なセリフがSNSでも話題になっている。本作は、10年間恋愛をしていない「恋愛迷子」の向井くん(赤楚衛二)が新たな恋愛に立ち向かう様子を描くラブストーリー。洸稀は、そんな向井くんの良き相談相手であり、向井くんの恋を指南する重要なキャラクターだ。時に向井くんに強いダメージを与えてしまうものの、洸稀の言葉はどれも頷くようなものばかりで、女性視聴者からの共感性が高いキャラクターでもある。

赤楚衛二、波瑠

 洸稀を魅力たっぷりに演じているのは波瑠だ。これまでも同世代女性の代弁者とも言えるキャラクターを演じることが多く、それでいて飾らぬ姿に心惹かれる俳優である。今回はそんな波瑠の魅力を紐解きながら、『こっち向いてよ向井くん』での見どころを論じていきたい。

 中学生で芸能界入りした波瑠は15歳の時にファッション雑誌『Seventeen』(集英社)でモデルデビュー。その後は、ファッション雑誌『non-no』(集英社)でも活躍していたことから、彼女と同世代の視聴者の中には当時のモデルのイメージが記憶に残っている方もいるだろう。モデル業の傍ら『マリア様がみてる』(2010年)で長編映画初主演を果たし、徐々に俳優としてのキャリアを積んでいく。大きな転機となったのはNHK連続テレビ小説『あさが来た』でヒロインのあさ役に抜擢されたことだろう。4度目の朝ドラオーディションにしてヒロインの座を獲得した波瑠は、この作品で視聴者の認知度を高めた。ここからは主演作が一気に増え、トップ俳優へと駆け上がる。

波瑠、同世代の共感を集める表現力 次なる篠原涼子的存在になるか?

2015年の朝ドラ『あさが来た』(NHK総合)以来ずっと主演ドラマの放送が続く波瑠は、真面目で不器用な役柄が同世代の共感を呼んで…

 昨今では『サバイバル・ウェディング』(日本テレビ系)、『G線上のあなたと私』(TBS系)、『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』(日本テレビ系)、『魔法のリノベ』(カンテレ・フジテレビ系)、『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)など連ドラでの主演が続き、多くの視聴者の共感を呼んできたことも記憶に新しい。どのキャラクターも一本芯の通った波瑠らしさに溢れており、お仕事ドラマからラブストーリーまで幅広い役で本質を突くリアルさを見せてくれた。波瑠は、恋愛と仕事が地続きに描かれることの増えた令和のドラマで、自分の意見を持ち、まっすぐ邁進するヒロインを演じることができる。それは媚びや妥協のない、誠実で自立したヒロインであり、視聴者にとっても心強いロールモデルとなることだろう。

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