『らんまん』神木隆之介の瞳が再び輝きを放つ 万太郎がたどりついた「わしは一人じゃない」

『らんまん』万太郎の瞳が再び輝きを放つ

 田邊(要潤)から東京大学植物学教室への出入りを禁じられ、愛娘である園子を亡くし、さらには峰屋の廃業、マキシモヴィッチ博士の訃報と、万太郎(神木隆之介)にとって悲しいニュースが続いていた『らんまん』(NHK総合)。それでも「一属一種の植物もある。一人でもやる」と植物採集を再開させた万太郎にとって、第19週「ヤッコソウ」は再生の物語。真っ暗な道を再び歩み始めた万太郎の周りには、妻であり笹のようにたくましく生きる寿恵子(浜辺美波)をはじめ、波多野(前原滉)や藤丸(前原瑞樹)といったかつての仲間たちが今も変わらずに手を差し伸べてくれていた。そして新たな出会い=芽が育ち、それが枝葉に成長し、縁になっていくことを万太郎は知る。

 その芽となるのが、万太郎が高知の山奥で出会う山元虎鉄(寺田心)。遍路宿「角屋」の息子で、彼のおかげで万太郎はシイの木の根元に並ぶ、白く小さく、大名行列の“奴さん”のような形をした植物と出会う。それは雄しべの帽子が抜け落ちることで雌しべが顔を出すという珍しい特性を持った植物。この植物を研究し突き止めるため、万太郎は借金をしてまでも、外国の書籍を取り寄せ、新種であるかを調べていた。

 その半年後、田邊が刊行した帝国大学発行の『大日本植物図解』を持って、波多野と藤丸が槙野家の長屋を訪れてくるが、万太郎が“語学の天才”と一目置く波多野、さらに藤丸を誘って、先述した植物の調査をしている姿は、かつて大窪(今野浩喜)らと「ヤマトグサ」が新種の植物であることを突き止めた植物学教室での日々を彷彿とさせる。植物の特徴を例えた「ちょっきり、ニョッキリ」というユニークなフレーズを挟みながら、波多野の「それじゃあ、はじめよう」を意味するドイツ語を皮切りに、調査は夜通し続いていく。

 その結果、3人は新種どころか、植物分類学上の属も科も新しく発見であるという推論にたどり着く。万太郎が命名するのは「ヤッコソウ科」。さらに見つけた山元虎鉄の名から学名は「ミトラステモン・ヤマモトイ・マキノ」、科の名前は「ミトラステモナケアエ」。意味は「僧侶の帽子のような雄しべ」で、日本で初めての新しい科となる。ちなみに、現在ヤッコソウは高知県の天然記念物に指定されており、「冬の使者」と呼ばれ親しまれるようになっている。

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