杉野遥亮はどの作品でも支持される 『東リべ』『どうする家康』から紐解くフィット力

杉野遥亮はどの作品でも支持される

 どこへ行っても杉野遥亮がいる。いまそのような状況だ。劇場に足を運べば彼の出演作である『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -決戦-』が上映されていて、テレビをつければ大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)に重要なキャラクターの1人として登場。そればかりか主演ドラマ『ばらかもん』(フジテレビ系)も始まった。まさに、どこへ行っても杉野遥亮がいる。そのような状況なのである。

 しかしこれは何もおかしなことではないように思う。自然体であらゆる作品にフィットしてみせる杉野ならば、むしろこのような状況に置かれているのが当然なくらいだ。そんな現在の彼の魅力を紐解いてみたい。

 『東京リベンジャーズ』の2部作は、2021年に大ヒットした第1作目の続編にあたるものだ。物語の重要な柱はいくつかあるのだが、本作をもっとも端的に言い表すならば「ヤンキー映画」だろう。これだとあまりに雑な括り方になってしまうが、要は若い男たちがケンカを繰り広げるさまが大きく扱われる作品だということ。杉野は第1作目から主要キャストの中でも物語のカギを握る橘ナオトというキャラクターを演じているのだが、彼はヤンキーではない。つまり、ほかの者たちのような派手な言動を展開することがなければ、ケンカをすることもない。非現実的なキャラクターばかりが並ぶ中、彼がもっとも現実的な、いわば普通の人物なのである。

 物語は主人公(北村匠海)が過去にタイムリープし、ヒロイン(今田美桜)を救うために奮闘するさまを描くもの。ナオトはヒロインの弟であり、彼と握手をすることによって主人公は時空を超えることができる。この情報だけ抜き出してもナオトが重要な人物であることが分かるが、やはり彼のもっとも重要な役割は、現実的な人物として私たち観客と非現実的な世界とを繋ぐことにあるように思う。ヤンキーたちの圧倒的な世界観に飲み込まれることなく、淡々とナオトという人生を生きる。これが杉野の役割なのだ。多くの観客がすっと作品世界に入っていける理由は、彼のフィット力にあるのではないだろうか。

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