『ばらかもん』には杉野遥亮の“全て”が映る 掲げられた“夢中は努力に勝る”のテーマ
「まだ若いのにずいぶん型にはまった字を書くね。手本のような字というべきか、賞をとるために買いたものというべきか……実につまらん字だ」
若手書道家の半田清舟(杉野遥亮)は、受賞作を見た書道界の重鎮・八神龍之介(田中泯)からは痛烈な一言を食らい、さらには高名な書道家である父・半田清明(遠藤憲一)からも「お前は書道家の前に、人間として欠けている部分がある」と言われ、五島列島での生活を命じられる。
『ばらかもん』(フジテレビ系)第1話では、都会で生まれ育った清舟の、思いがけない島での生活の幕開けと島民との出会いが描かれた。
見渡す限り目の冴えるような生命力に溢れた緑に、景色の一部として当たり前にそこにある海、空港から次に出るバスは5時間後で、待てどもタクシーは一台もやって来ない。たまたま道ゆくトラクターと遭遇し相乗りさせてもらって何とか辿り着いた清舟が滞在する一軒家は、実は小学生・琴石なる(宮崎莉里沙)や中学生・山村美和(豊嶋花)など島の子どもたちの“基地”で溜まり場だった。勝手に次から次に人の家に上がり込んできて、当然のように荷解きを手伝う島民の歓迎に飲み込まれ、清舟と周囲との境界線がどんどんなくなっていく。
そこで待ち受けていたのは、清舟が想像していた一人で田舎に籠もって書道に向き合う生活とは程遠いものだ。放ってはおいてはくれない周囲と、そして素直で、凝り固まったところが全くないなるの自由な言動に清舟の中で早くも変化が見え始める。
「正解が分からなくて、どう変わればいいかわからないから結局今まで通り書くしかなくて。こんなん続けても何も生まれないのに」と漏らしていた清舟は、賞に選ばれたって親の七光りだと陰で噂されてしまう。それに「賞を獲るために書いている」と明言してしまうほどに自分の中にはない“正解”を求め続けている。一人で籠城して書道に向き合ったからといって、そこに大きな変化があるわけでないこともわかっていながらも、焦りばかりが募り自分自身を変えるきっかけを掴めずにいたようだ。
「迷ったら基本に帰れ」という父からの教えに忠実に書道に向き合ってきた清舟の中で、“基本”というのがどうやら知らないうちに“手本”に転換されているようだった。しかし清明が伝えたかった“基本”とは「書道を好きな気持ち」や、マネージャー・川藤鷹生(中尾明慶)が示唆していた“楽しいと思う気持ち”などの初心や原動力を指すのではないだろうか。