杉野遥亮はどの作品でも支持される 『東リべ』『どうする家康』から紐解くフィット力

杉野遥亮はどの作品でも支持される

 いっぽう、放送中の『どうする家康』では作品の世界に完全に染まりながら、よりパフォーマンス性の高い演技を展開している。彼が演じているのは主人公・徳川家康(松本潤)の家臣の一人である榊原康政。物語の舞台は戦乱の世。かつて実在した人物とはいえ、この令和の時代を生きる私たちからすると非常にフィクショナルなキャラクターだ。だからこそ、誰もがよりパフォーマンス性の高い演技に徹する。これはつまり、より演技らしい演技をする、ということである。

 『東京リベンジャーズ』のナオト役とは違い、口調も所作もすべてがオーバーだ。もちろん、意図してのことだろう。大河ドラマは幅広い層の人々が観るものだ。オーバー気味に演じなければ、榊原康政(小平太)というキャラクターをより正確に伝えることはできない。こちらでは杉野のフィット力のみならず、表現力の高さに触れられるわけだ。いわばナオトと康政は対照的な役どころ。この2人に出会っただけでも十分に、なぜ杉野が俳優としてこんなにも支持されているのかが分かるはずである。

 このような状況の中で始まった『ばらかもん』。俳優デビューからまだ10年も経っていない杉野が、早くもプライム帯の連続ドラマで主演を務めるという快挙である。が、ここまで記してきたことから分かるように、これは何も不思議なことではないのだ。同作は五島列島を舞台とした人間ドラマ。自然体で作品世界に溶け込みながら、『どうする家康』での大胆さとは真逆の繊細な表現に徹している。これを経ることで、彼が支持される理由が広く共有されるはず。俳優としての現在地もさらに大きく変わるのだろう。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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