『どうする家康』松山ケンイチが相変わらずの“イカサマ師”ぶり 家康の著しい成長も

『どうする家康』松山ケンイチの粋な再登場

 『どうする家康』(NHK総合)第29回「伊賀を越えろ!」。信長(岡田准一)を急襲した明智光秀(酒向芳)の命令で、家康(松本潤)は浪人から村人まであらゆる者から命をつけ狙われることになった。三河を目指してひた走るも、既に金もつき、満身創痍な家康たちに、半蔵(山田孝之)は服部党の故郷である伊賀を抜ける「伊賀越え」を進言する。

 道中、家康一行は小川城に身を寄せた。小川城の城主であり、甲賀忍者の親玉である多羅尾(きたろう)は満面の笑みを浮かべて家康たちを歓迎するのだが、半蔵は「どうも親切が過ぎるかと」と疑念を抱く。半蔵の言葉を信じた家康一行は、多羅尾に感状を残すと、朝を待たずに城を出て行った。

 多羅尾らは伊賀越えに難色を示していたが、彼らの予感は的中する。伊賀を越える道中、家康と半蔵ら服部党は伊賀忍者の集団に襲われ、牢に押し込められることに。伊賀の頭領・百地丹波(嶋田久作)は憎き信長を討ち取った光秀に家康の首をくれてやると、家康に刀を向けた。

 そんな折、思わぬ人物が家康の命を救う。

「こりゃ驚いた。本当に家康じゃ」
「こんな所で会おうとは。フ……惨めな姿じゃのう」

 百地に軍師と呼ばれたその男は、かつて家康の家臣だった本多正信(松山ケンイチ)だった。家康が死を覚悟するほどの場面でありながら、正信はおちょくるような口調で家康に近づき、ニタニタ笑いながらその顔を覗き込む。胡散臭い面持ちは相変わらずだ。

 正信は、その無責任な言動ゆえ、家臣団から嫌われており“イカサマ師”と呼ばれていた。そんな正信の型破りな発想のおかげで、今川氏真(溝端淳平)に捕らわれた瀬名(有村架純)を取り戻すことができたものの、「三河一向一揆」の際は一向宗側の軍師として家康に対抗し、三河を追放されることになった。第9回で三河を去った後、正信の消息は分からないままだった。けれど、再登場を果たした正信の顔つきはいい意味で変わっていなかった。あいも変わらず正信は食えない男だ。

 正信は百地に「三河一向一揆」での出来事を語ると、「今でもこのろくでなしを心底恨んどる」と口にする。「家康、哀れじゃのう」と哀れむ正信の表情は憎たらしい。しかし正信は家康の首を取るよう百地にけしかけながらも、「妙なうわさが広まっとるが気にすることはねえ」「根も葉もないうわさよ。信長が生き延びたっちゅう」と声を挟み、百地、そして家康がどう立ち回るかを確かめていた。正信の佇まいは、家康を守ろうと口々に自らが家康だと名乗った服部党の面々とは異なる。正信は真正直に家康を守ろうとはしない。百地が途中で正信の策に気づき、家康の返答に結論を託したからよかったものの、家康の命がかかった駆け引きにはとてもハラハラさせられる。

 だが、正信が家康を気にかけていたのは本当だ。百地が家康に惚れ込む正信の気持ちを汲むほどの思いを正信は抱いている。「なぜ、わしを助けた?」と問う家康に、正信は「身をもって伊賀者を助けようとする殿様など初めて見ました。なかなかの主になられたようじゃ」とニヤリと笑う。飄々とした物言いと感心の仕方がどこか偉そうで、これまた少し憎たらしいが、正信ならではの慕い方ともいえる。

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