『どうする家康』松山ケンイチが相変わらずの“イカサマ師”ぶり 家康の著しい成長も

『どうする家康』松山ケンイチの粋な再登場

 家康のもとへ帰参することを望む正信の口ぶりもまた彼らしい。家康を助けた時と同じやり方で「無論、今更殿のもとへ帰参できるとはつゆほど思っておりませんのでご心配なく。某は三河より追放された身ですから」と主張しつつも、「うん? う〜ん? 今、殿がおわすのは三河ではなく遠江、浜松……」とそれとなく自分の望みを匂わせる。家康から「そうじゃ、浜松じゃ」「気が向いたら浜松へ来い」と言われた正信は嬉しそうにニヤリと笑った。

 三河追放後もしたたかに生き抜いてきた本多正信が、再び家臣団入りを果たす。いいかげんな言動もおそらく変わらないことから、これまで同様、家臣団の面々からは“イカサマ師”と呼ばれ、時に苦々しい顔を向けられるに違いない。けれど、常識にとらわれない正信の発想が、信長亡き世を生き抜き、天下を取ろうとする家康の支えになることだろう。

 第29回では正信の再登場にも驚かされたが、正信の駆け引きの最中、知略をめぐらす家康の姿も目を引いた。正信の策に気づいた百地は、家康に「信長は生きとると思うか?」と問いかける。家康は「死んでいると思う」「だが首が出ていないのは確か」と返すと、光秀の現状を考慮した上で、こう迫る。

「わしに明智を討たせよ。わしに恩を売れ。恐らくそれがお主にとって最も利となることじゃ」

 自分の首と引き換えに服部党を助けようとする家康は、これまでの家康と同じ、優しい強さに満ちている。しかし今の家康の強さはそれだけではない。天下を取る覚悟を決めた家康は、戦乱の世を生き延びる力を存分に発揮する。「その口車に乗った!」「お主にかける」と言った百地に、家康は無言でうなずく。その信頼を無碍にはしないと告げる強いまなざしが心に残る。家康はさまざまな人々を着々と味方につけている。

 回を追うごとに、“弱いプリンス”からの著しい成長を見せている家康。本性をあらわにした秀吉(ムロツヨシ)との対峙も近そうだ。

■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK

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