『スキップとローファー』が教えてくれた大切なこと 美津未にはなれない私たちのために

『スキップとローファー』が教えてくれたこと

 TVアニメ『スキップとローファー』の最終回となる第12話が、TOKYO MXにて6月20日に放送された。

 多くのアニメファンを虜にした本作は、毎話の放送直後にはSNSを中心に盛り上がりを見せてきた。最終話を終えた今、本作が描いていたものとは何だったのかを改めて紐解いていきたい。

 『スキップとローファー』は高校生のスクールライフを通して、友人や家族との人間関係の在り方や心の機微を繊細に描いてきた。高校生のスクールライフを描いたアニメならではの清涼感は、それだけで面白さとして十分に成り立っている。しかし面白さの本質はそこにあるのではなく、各キャラのエピソードからうかがえる「ありのままでいることへの肯定」にあるのではないか。

 まずそれがそのまま描かれているのが、主人公の美津未の変化だろう。地元に帰省した際、ふみに「そういや、美津未ちゃん『練習にこれからは標準語喋る』言うとったんは、やめたが?」と聞かれた美津未は、「……うん。そういうんからかわん友達できたから、いいげん」と答える。美津未にとっての憧れの土地・東京は、クラスメイトとの交流を通して“練習の必要ない安心できる居場所”に少しずつ変わっていったことがわかるシーンだ。そして同時に、美津未が積み上げてきた友人たちとの信頼関係が強く感じられる場面でもあった。

 公式から「天然しあわせインフルエンサー」と称される、美津未の柔軟で前向きなキャラクターは本作の大きな魅力のひとつでもある。美津未を介して、クラスメイトたちの心は回を重ねるごとに少しずつ解かれていく。しかし観ている側としては、その眩しさゆえに、美津未になれない自分に後ろめたさを感じてしまう視聴者もいたかもしれない。そんな視聴者と一緒に、本作のラストまで伴走してくれるのが、ミカの存在である。

 常に他人の視線を意識してしまうがゆえに素直になれないミカは、美津未よりも斜めに物事を見ているようにも感じられる。しかし、物語の中でミカは“実際には口に出していない”場面も多く、だからこそ実は共感を得ていたキャラなのではないか。「言わない・言ってはいけないけれど考えていること」の一つや二つ、誰にだってあるものだ。作中ではミカの心情に気がついたナオが、後ろめたいネガティブな感情を大人の視点でまるっと肯定している。

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