『スキップとローファー』になぜ“癒される”? 天然インフルエンサーな主人公の新しさ

『スキップとローファー』になぜ癒される?

 近年稀に見る大豊作とSNSで騒がれる2023年春アニメ。

 推しであるアイドルの息子に転生した主人公が、芸能界の光と闇に迫る衝撃作『【推しの子】』や、仲間の裏切りで死罪人となった最強の忍が無罪放免の条件である不老不死の仙薬を手に入れるため、化け物たちとの戦いに身を投じる『地獄楽』など、内容がアグレッシブで演出も派手な作品が注目を浴びている。だが、今回はそれに反し、一見控えめだが観終わった後は全身が多幸感に包まれるアニメを紹介したい。

『鬼滅の刃』『水星の魔女』『【推しの子】』など、“覇権”候補大量の4月アニメ注目作

2023年も3カ月が過ぎようとしており、TVアニメも春クールを目前に控えている。今回は4月から放送されるTVアニメが放送直前とい…

 「マンガ大賞2020」第3位にランクイン、累計発行部数は100万部を突破、さらに第47回講談社漫画賞総合部門を受賞した高松美咲の人気コミックが原作のアニメ『スキップとローファー』だ。石川県ののどかな街から上京し、東京の高偏差値高校に通い始める女子高生の“みつみ”こと、岩倉美津未とクラスメイトたちの交流を描く本作。その中で特別なことは何もしていないのに、なぜか周囲に影響をもたらしていく彼女を象徴するのが“天然しあわせインフルエンサー”という言葉だ。

 ここ数年、よく耳にするようになったインフルエンサーというワード。主にInstagramやTikTokをはじめとしたソーシャルメディアで多大な影響力を持ち、自身の美容法やファッション、ライフスタイルなどの情報発信を行うことで生計を立てる人たちを表す言葉だが、パッと聞いてどういう人物像を思い浮かべるだろうか。きっと、多くの人はセルフプロデュース力に長けており、一瞬で人の目を惹きつける何かを持っているカリスマを頭に描くだろう。

 それに対して、みつみはおかっぱの素朴な少女。頭が良く地元で神童とまで言われていたみつみはどうやら自分をしっかり者に見せたいようだけど、道に迷って入学式に遅刻するわ、生徒代表挨拶で緊張してしまい、みんなの前で吐いてしまうわ、変な自己紹介でクラスメイトをドン引きさせてしまうわ、序盤からことごとくセルフプロデュースに失敗する。だけど、そんな理想と現実のギャップに折り合いをつけながら、将来像実現に向けて努力する姿。それでいて、他者との関わりもおろそかにせず、人の悪いところよりも良いところを見つけて認める彼女の素直な心が、周りを柔らかく刺激していく。

 中でも特に影響されていくのが、都会的な雰囲気を醸し出すクラスのイケメン・志摩だ。もともと母の勧めで子役をやっていた彼は人から期待されることに疲れ、今ではかなり緩めに生きている。人間関係に摩擦を生まないよう、どんな時も笑顔でやり過ごすし、最初から色んなことを諦めているから必死にならない。それが逆に周りからはスマートに見えて異性から好かれたりもするけれど、内心は空虚さを抱えている。

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