『スキップとローファー』が教えてくれた大切なこと 美津未にはなれない私たちのために

『スキップとローファー』が教えてくれたこと

 同じようなネガティブな気持ちとして、最終話では志摩の兼近先輩への嫉妬も描かれる。常に先輩にだけはどこかドライに接してきた志摩だが、彼の中にも嫉妬の感情があることは、おそらく他のどのキャラクターも気がついていない。クラスの人気者で、一見完璧に見える志摩でさえ、誰かに嫉妬をすることもある。ドロドロとした感情や悔しさであっても、考え方や感じ方が違うことを肯定する、悪役を作らせない安心感が最後まで作品に漂っていた。

 他人と違うことは当たり前で、悪いことでもなんでもない。だからこそ、本作が見せてくれたのは、「自分と重なる部分のある理解者がこの世界のどこかに必ずいる」という希望でもある。ミカにそっと寄り添うナオ、志摩の笑顔を自然に引き出す美津未……幼なじみのクリスも志摩の理解者だ。物語を彩る彼らは、私たちが“出会いたかった誰か”でもある。そしてそんな誰かに出会うために必要な、ほんの少しの自己開示の大切さも教えてくれる。

 もちろん現実は、アニメのようにうまくいかないことの方が多い。それでも、すれ違う人々が同じ悩みを抱えていると思えることで、ちょっとだけ心が軽くなるような瞬間がある。そう考えると、『スキップとローファー』が見せてくれた世界は、単なる夢物語ではないのかもしれない。

■配信情報
『スキップとローファー』
DMM TVにて配信中
原作:高松美咲『スキップとローファー』(講談社『月刊アフタヌーン』連載)
監督・シリーズ構成:出合小都美
副監督:阿部ゆり子
キャラクターデザイン・総作画監督:梅下麻奈未
総作画監督:井川麗奈
プロップ設定:樋口聡美
美術監督:E-カエサル
美術監修:東潤一
美術設定:藤井祐太
色彩設計:小針裕子
撮影監督:出水田和人
3D監督 :市川元成
編集:髙橋歩
音響監督:山田陽
音楽制作:DMM music
音楽:若林タカツグ
アニメーション制作:P.A.WORKS
製作:「スキップとローファー」製作委員会
オープニングテーマ:須田景凪「メロウ」
エンディングテーマ:逢田梨香子「ハナウタとまわり道」
出演:岩倉美津未:黒沢ともよ、志摩聡介:江越彬紀、江頭ミカ:寺崎裕香、村重結月:内田真礼、久留米誠:潘めぐみ、ナオ:斎賀みつき、迎井司:田中光、山田健斗:村瀬歩、兼近鳴海:木村良平、高嶺十貴子:津田美波
©高松美咲・講談社/「スキップとローファー」製作委員会
アニメ公式サイト:https://skip-and-loafer.com/
公式Twitter:https://twitter.com/skip_and_loafer
公式Instagram:https://www.instagram.com/skip_and_loafer/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@skip_and_loafer

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