『教場0』木村拓哉演じる風間“教官”誕生の瞬間が 森山未來が口にした言葉の真意とは

『教場0』風間“教官”誕生の瞬間が

 千枚通しを使った殺人事件が発生し、隼田(新垣結衣)と共に現場へと向かう風間(木村拓哉)。そこは実験中の事故によって失明した元有機化学者の清家(北大路欣也)の邸宅であり、彼の娘・紗季(森カンナ)の夫・甘木保則(馬場徹)が殺害されていた。失明している清家に、心臓をめがけて一突きすることは不可能だと考えた隼田は、この犯行も逃亡中の十崎(森山未來)によるものであると推察。しかし風間は、「決めつけるな」と一蹴するのである。

 6月19日に放送された『風間公親-教場0-』(フジテレビ系)は最終話。第3話と第4話で“風間道場”の道場生として風間とふたつの事件に臨み、少年係に転属した後に十崎の事件を追う専従捜査チームに加わった隼田が、再び風間とペアを組むことになる。もっとも、序盤で描かれる清家の事件は、“先入観にとらわれず”、“あらゆる可能性を否定せずに”という捜査の基本的な部分に立ち返るためのエピソードとして機能したにすぎない。それゆえ最終話としての見どころは、終盤半分に委ねられる。そこで描かれるのはもちろん、十崎との対峙、そして風間“教官”の誕生の瞬間だ。

 隼田と風間が清家にとどめを刺しに向かう車内で入る一本の無線。それは十崎が職務質問を受けて逮捕されたとの報せだった。取り調べに当たった柳沢(坂口憲二)は、あの雨の夜に十崎と現場で遭遇していた配達員の鳥羽(濱田岳)に面通しをさせるのだが、確信が持てない鳥羽から証言を得ることができず。しかも職務質問を行った警察官2名が不適切な方法で彼を逮捕していたこともわかり、結果的に十崎は釈放される。その無力感が、風間を捜査の一線から退かせ、鬼教官へと仕立て上げていくのだろう。この辺りの風間の感情の動きについては多くは語られない。それはこのドラマが守り抜いてきたトーンに則ったものといえよう。

 振り返ってみれば、2020年1月に放送されたSP版『教場』(フジテレビ系)の序盤、宮坂(工藤阿須加)に風間が目を付けたのは職務質問の訓練の時だった。今回描かれた、杜撰で不適切な職務質問が十崎を逃すことになった流れを踏まえれば、風間が警察官の職務の基礎中の基礎である職務質問に重点を置いたことにも合点がいく。また、同じくSP版での職務質問の訓練で「持っているものを決めつけない」と言ったことも、この最終回での“あらゆる可能性を否定しない”という姿勢と結びつくものだ。

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