金子大地が意識する“どう演じづらくするか”というポリシー 「常に疑問を持って挑みたい」

金子大地、芝居における自身のポリシー

 子育てに奮闘する育児休業中の刑事・秋月春風を主軸に描いたホームドラマ&ミステリー、NHKドラマ10『育休刑事』が放送中だ。

 個性豊かなキャラクターに振り回される主人公・春風を演じるのは、俳優・金子大地。

 昨年公開された映画『手』や、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』などで注目を集める金子。『育休刑事』で好青年な刑事を演じたかと思えば、7月に公開される映画『モダンかアナーキー』では高校3年生を演じるなど、幅広い役柄をこなすオールラウンダーだ。

 そういった自身の強みについてどのように感じているのか、金子に話を聞いた。(於ありさ)【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

個性豊かなキャラクターの中で「どんどん存在が薄まっていく」

ーー現在放送中の『育休刑事』、金子さんが演じる春風は個性豊かなキャラクターの中でかなり落ち着いた印象を受けます。

金子大地(以下、金子):あんな明るい姉ちゃんがいて、あんなクレイジーな母ちゃんがいて、静かな父さんがいたら、きっとこうなりますよね(笑)。すごく冷静で、物事を多角的に考えている頭のいい青年だと思います。

ーー心の声が当てられるシーンが多い印象です。実際の現場では、言葉にはせず表情だけで表現することが多かったのではないかと思います。

金子:春風の周りにいる人たちはみんなはっちゃけているので、受け手になることが多いキャラクターで。心の中でしか自分を表現する場がないんですよね。だから、現場では表情でそのとき考えていることを表現して、後からアフレコでモノローグを入れなきゃいけなかったので、「どうやったら伝わるかな」っていうのはより意識しました。

ーー育休中の刑事という役柄ゆえに、常に蓮くんを抱っこしている姿も印象的です。

金子:最初は筋肉痛になりましたよ。それまで、自分の身近に赤ちゃんがいなかったので、クランクイン前に赤ちゃんの抱き方やオムツの替え方、ミルクのあげ方の練習をする時間を設けていただいて助かりました。でも、自分としては別にそれがぎこちなかったとしても、新米パパ役だからいいのかなとも思って。物語が進むにつれて赤ちゃんとともに、春風自身も成長していけたらいいなと思います。

『育休刑事』写真提供:NHK

ーー『育休刑事』は、多くの先輩が出演されている現場だったと思います。その中でも、主演として心がけたことはありますか?

金子:とにかく明るくいようと思いました。でも、僕がそんなことを思わなくても、みなさん自由に楽しそうに演じてくださっていたので、むしろ支えてもらっていた気がしますね。それがすごく心強かったです。

ーーそもそも主演を任されることが増える中で、心持ちの変化はありますか?

金子:主役を演じることになると、どうしても毎回のように反省することが増えました。「もっとこうできたな」って。でも、大抵はどの現場もそんなことを考える必要もないんですけどね。

ーー反省するとのことですが、そういったときは自分で解決するのでしょうか。

金子:そうですね。いやじゃないですか、主役に悩み相談をされても(笑)。だから自分の中だけに留めておいているのですが、今回のドラマに関してはキャストさんもスタッフさんもすごく優秀だったから、助けていただけたなとしみじみ思います。

ーードラマの放送も残り2話です。今後、どんなところが見どころになりますか?

金子:事件も大きくなっていって、周りの人たちの活躍も増していくので、僕の存在感はどんどん薄くなっていくのではないかと思います(笑)。ただ、アクションシーンも増えてくるので、そこは楽しみにしていただきたいです。

同世代と衝動だけで作った『モダンかアナーキー』

『モダンかアナーキー』©︎2023 Daichi Sugimoto

ーー7月1日には主演映画『モダンかアナーキー』が公開されます。自主制作映画とのことですが、どのような作品ですか?

金子:東京・練馬を舞台に、青春、学生時代を暴れ回ったような、何かを抱えている若者をリアルにドキュメンタリータッチで撮っているような作品です。実は4年前、監督もまだ20代だった頃に撮影したこともあって、荒削りではあるけれど、若者のエネルギーが爆発しているような映画になっているんじゃないかと思います。キャストも今でこそ錚々たるメンバーですが、当時はそこまで仕事がなく「やってやる」精神に溢れた人が集まった作品になっているのかなと。そういう瞬間を残せた、すごく貴重な作品になっています。

ーー『モダンかアナーキー』を通して、観た人にどう受け取ってほしいですか?

金子:感想が違ってもいいと思います。観終わった後に言葉の意味を探るよりも、感覚にばっちりはまるかはまらないかを楽しんでほしいです。映画って、おもしろさを明確にしないといけないみたいなところもありますが、だからこそ熱量や衝動だけで作った映画があるのも僕はいいなと思っていて。僕はこういう映画をやりたくて、この世界に入ったんだなとしみじみ思えました。

ーーいわゆる商業作品の映画と違う点はどこにあると感じましたか?

金子:やはり監督のやりたいことを、100%できるのが自主制作映画の強みだなと感じました。商業映画の場合だと、多くの人が関わるので、かなり慎重にやっていくと思うんですけど、今回は監督の感性に従った自由度の高い撮影を行ったなと。お芝居する側としてもすごく楽しかったです。

ーーなるほど。村上虹郎さん、河井優実さんなど、同世代で活躍されていらっしゃる方々が出演されていますね。

金子:そうなんですよ。ただ、僕だけ別軸なので、現場でお会いすることはなかったのですが。

ーーこの映画に限らず、同年代の俳優さんが多いかと思います。そういった方々の活躍は気になるタイプでしょうか?

金子:気になりますよ。めちゃくちゃ。本当は王道でいきたいなとは思いますが、僕みたいな俳優は「いろいろやらないと」っていう危機感が常にあるので、王道だけでなく、地に足をつけて、お芝居をやっていきたいなと。ライバルが多いなかで「みんながやりたがらないのも含めて全部俺がやろう」くらいの気持ちでいます。

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