『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』好スタート その「快挙」の背景にあるもの

『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』快挙の背景

 先週末の動員ランキングは、公開5週目の『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が通算4週目の1位に。週末3日間の動員は42万6000人、興収は6億3200万円。5月28日までの31日間の累計動員は705万7469人、興収はちょうど1ヶ月で100億円を超えて100億5785万8799円となっている。ちなみに、全世界興収では12.88億ドル突破、2013年公開の『アナと雪の女王』を抜いてアニメ映画歴代2位に。歴代1位は2019年公開の『アナと雪の女王2』(14億5368万3476ドル)なので、『マリオ』が『アナ雪』2作の間に割って入ったかたちとなる。

 初登場で最上位につけたのは『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』。週末3日間の動員は22万1000人、興収は3億1500万円。映連(日本映画製作者連盟)4社、東宝、東映、松竹、角川以外の配給(本作の配給はアスミック・エース)による実写日本映画として、この初動成績は快挙と言っていいだろう。

 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、荒木飛呂彦の大人気コミック『ジョジョの奇妙な冒険』から生まれたスピンオフの実写化作品。2020年12月から2022年12月にかけて、3期にわたって全8話がNHKで放送された『岸辺露伴は動かない』のキャストとスタッフが、今回の作品のために再結集したわけだが、これまでのNHKドラマの映画化作品同様、映画化にはNHKが関わっていない(NHKの子会社、NHKエンタープライズは制作に参加している)。これはドラマ版の放送局が製作委員会の幹事を務めるだけでなく、テレビスポットから朝の情報番組やバラエティ番組まで、公開タイミングには局全体をジャックしての絨毯爆撃のような宣伝がおこなわれる民放テレビドラマの映画化作品とは大きく異なる点である。

 同じNHKの連続ドラマの映画化作品で前例に挙げられるのは、2009年公開の『ハゲタカ』、2012年公開の『外事警察 その男に騙されるな』あたりだが、いずれもかなりしっかりと作られた映画版だったにもかかわらず、そこまで大きなヒットには結びつかなかった。その背景には、ドラマを放送していた局による、局を挙げての宣伝が行えないことだけでなく、そもそも製作母体を局から切り離して新たに立ち上げなくてはいけないという公共放送局としてのNHKの縛りによる、ドラマの放送から劇場版の公開までのタイムラグも大きかった。そういう意味で、今回の『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は、最新話の放送から劇場版公開までが6ヶ月以内と、NHKドラマの映画化らしからぬタイムリーさを実現してみせた。映画版の製作を見据えての周到な根回しと準備が、興行の結果として実ったというわけだ。

■公開情報
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
全国公開中
出演:高橋一生、飯豊まりえ、長尾謙杜、安藤政信、美波、木村文乃
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』(集英社 ウルトラジャンプ愛蔵版コミックス 刊)
監督:渡辺一貴
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔/新音楽制作工房
人物デザイン監修・衣装デザイン:柘植伊佐夫
配給:アスミック・エース
制作プロダクション:アスミック・エース、NHKエンタープライズ、P.I.C.S.
製作:『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』 製作委員会
©2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会 ©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
公式サイト:kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp

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