大東駿介、“裏の顔”を持つ演技の巧みさ 『らんまん』では神木隆之介を洗礼する輩に

大東駿介の“裏の顔”を持つ演技の巧みさ

「ドクダミの匂いじゃ。日が当たらん証拠じゃ」

 そう言いながら今にも壊れそうな建物の奥へと進んでいく万太郎(神木隆之介)と、匂いに思わず「うっ……」という声を漏らしてしまう竹雄(志尊淳)。『らんまん』(NHK総合)の第6週のタイトルは「ドクダミ」。万太郎たちは下宿先を探している途中で盗まれてしまったトランクを探して、ある長屋へとたどり着いた。

 そこでトランクに入っていた標本を燃やそうとしていたのは、倉木隼人(大東駿介)という男。倉木は万太郎たちが高級牛すき鍋を食べに入った店のあたりで丁半賭博のようなことをして遊んでいた。どうやら店に入る時に、大荷物の中からトランクだけを特別大切にする万太郎を目にして、金目のものが入っていると踏んで盗んだようなのだ。しかしその中にあったものは、万太郎にとっては「金で買えない値打ちもの」だが、客観的な指摘をする竹雄曰く「草の干物とクズ紙」。サイコロでは仲間にイカサマを疑われるほど調子が良かった倉木は一攫千金を狙ったのだろうが、トランクの中身だけではなく立派なトランク自体も結局、一銭にもならなかった。焚き火を目の前にするその背中はどこかやけになっている気がした。

 倉木には彰義隊に所属し、上野戦争で新政府軍と戦った過去がある。上野戦争は戊辰戦争から始まる明治新政府軍と旧幕府軍の戦いのひとつで、彰義隊はこの戦争でほぼ全滅したとされている。実は倉木は数少ない生き残りなのである。戦争の経験が影響しているのか、倉木は定職には就かず、昼間から酒を飲むようなやさぐれ生活を送っている。

 そんな倉木を演じているのは大東駿介。NHK朝ドラへの出演は『ウェルかめ』(2009年度後期)以来、14年ぶりとなる。

 華やかな顔立ちと爽やかな笑顔が印象的な大東は、少しトゲのあるような表現になってしまうが、近年は“見かけはいい人”な役が多かった。たとえば、『スタンドUPスタート』(2023年/フジテレビ系)で演じた、シニア向けマンションの管理を行う音野奈緒(安達祐実)の夫・圭一郎は、大企業の社員だったが仕事で大きなストレスを抱えており、積み重なるイライラを専業主婦であり、毎日楽しそうにしている奈緒にぶつけていた。また、『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(2021年/テレビ東京系)で演じた中山拓也は、広島から妻の麻衣子(門脇麦)を伴って転勤してくるが、その転勤先で大学時代の後輩と再会し、不倫関係になっている。どちらも一見すると、真面目で優しそうな男性なのだがちょっと怖い“裏の顔”があったのだ。

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