『風間公親－教場0－』優等生を見事に演じた北村匠海　『教場II』を連想させる複数の要素

　警察学校の四方田（小日向文世）の推薦によって、新たに“風間道場”の一員となった遠野（北村匠海）。この『風間公親－教場0－』（フジテレビ系）に登場する5人の若手刑事たちのなかで、唯一スペシャルドラマ版にも登場し、風間（木村拓哉）が冷酷無比な教官となったこと、そして義眼となったことに密接に関与している重要人物こそが遠野である。5月8日に放送された第5話で彼が登場したということは、このドラマが早くも大きな転換期に突入したということだろうか。

　大学教授の梨多（野間口徹）が自宅のすぐそばで変死体となって発見される。第一発見者は梨多の教え子である戸守（水沢林太郎）という学生で、実は彼が夕方に卒論の採点をきっかけに梨多と言い合いになり、テラスから梨多を突き落として殺害していたのである。現場に衣服のボタンを落としたことに気付き、取りに戻るためタクシーに乗って現場に戻り、第一発見者のふりをして通報した戸守。臨場した遠野は、即座にある違和感を抱き、梨多の死が他殺であることを断定。そして風間の指導を受けながら、戸守に事情を聴くのである。

　遠野は明らかに、これまで登場した2人の若手刑事――瓜原（赤楚衛二）と隼田（新垣結衣）とは違う、どこかドライな目をしている。風間から警察の仕事とは何かと問われると、間髪入れずに「人を疑うこと」だと答える。そして捜査会議で証拠として提出されたタクシーのドライブレコーダーの映像に違和感を抱き、戸守に目星を付けると、その戸守＝犯人という仮説に生じた矛盾点を解消するためにまた新たな仮説を立て、本人に巧みに揺さぶりをかけながら仕留めていく。“優等生”といわれる彼の圧倒的なポテンシャルが、設定だけに依拠することなく行動として可視化された点は、今回のエピソードに確かな観応えを与えている。

　また、“疑う”遠野に対峙する被疑者が、よりにもよって“妄信”の渦中にいるという対極性もまた、今回のエピソードの巧妙さを高めているポイントだろう。梨多がゼミ生向けのコラムに仕込んだトラップを信じ込んでしまった戸守。それが今回の殺人事件を引き起こすこととなり、梨多が自作の地図に仕掛けた架空の地名というトラップ（それを自分の名前と同じ読みの地名にするところが地図制作者らしい愛嬌だ）が、戸守のほころびを見破る大きなきっかけとなる。そこにネット情報の妄信と、自分の頭で考え、時に疑うことの必要性という現実社会への問題提起も絡められるとなれば、なんとも合理的でスマートな筋立てといえよう。

　終盤、追い詰められた戸守は、家を出た際に拾った“千枚通し”で遠野に襲い掛かる。負傷した遠野の代わりに風間が戸守を制圧するわけだが、揉み合った際に風間のメガネは“右レンズだけ”割れてしまう。その後、転属届を突きつけた風間は、調整官の眞堂（小林薫）に、「彼は犯人に背を向けた」と告げる。『教場II』のラストで描かれた、あの一件を連想させる要素がここぞとばかりに散りばめられているではないか。また、風間と遠野のやりとりで触れられた、遠野が高校2年生の時に何があったのかという“過去”。予告映像ではあの雨の夜の様子がちらりと映されており、次話でどこまで核心に踏み込んでいくのか注目しておきたい。　

■放送情報
フジテレビ開局65周年特別企画『風間公親－教場0－』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00～21:54放送
出演：木村拓哉、赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太ほか
原作：長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』『教場X 刑事指導官・風間公親』（小学館）
脚本：君塚良一
演出・プロデュース：中江功
プロデュース：渡辺恒也、宋ハナ
音楽：佐藤直紀
主題歌：Uru「心得」（ソニー・ミュージックレーベルズ）
制作・著作：フジテレビ
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