『ラストマン』福山雅治と大泉洋の名コンビ 作品への視点示す“見る”ことのアナロジー

『ラストマン』“見る”ことのアナロジー

 バディの一方を出題者、片方を回答者として、2人のやり取りを通して真実に迫っていく筆致は洗練されていて、心太朗とかつての恋人である佐久良という補助線を引きながら、羽鳥が自首した理由やその背後にある人気俳優の不倫を明かしていく。ただれた関係が単なる犯行の動機ではなく、自ら濡れ衣を着せられた裏では保身と復讐が手を結んでいた。理屈を超えた男女の心の暗部が暴かれるシーンは圧巻だった。

 1話の中にこれだけの内容とメッセージを詰め込み、それでいて軽快なトーンに貫かれた『ラストマン』の娯楽作品としての射程の広さは唯一無二だ。すべてを一度に理解できなくても、作品を通して折り重なったコンテクストに触れることができる。脚本の黒岩勉はちょうど1年前に『マイファミリー』(TBS系)でドラマ好きをうならせたが、台本がすべてを知っているという結末から、物語を紡ぐ書き手の自負が垣間見えた。

 さて、どんなにシリアスなシーンでも自然とワクワクする福山・大泉コンビである。何かをしてくれそうな雰囲気をこれほど感じさせる2人はいない。キャラクターの設定もあってか、大泉は今作で笑顔を封印している。笑いを取りに行く頻度もだいぶ控えめで、本作は大泉の出演作の中でも異色の作品と言える。笑わせようと思えば、いくらでも笑わせることができる大泉が、今作では福山のおもしろさを引き出す役割に徹している。与えられた設定で、作品のトーンを壊さずにおもしろくする。成果は本編でご確認いただくとして、第3話をご覧になった方はきっと同意(アグリー)してくださることだろう。

■放送情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、寺尾聰、吉田羊、上川隆也
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
撮影監督:山本英夫
プロデュース:益田千愛、元井桃
編成プロデュース:東仲恵吾
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
製作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lastman_2023_tbs/
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:LASTMAN_tbs

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