『ラストマン』は期待を超える仕上がりに 第1話から“無敵の人”を扱った黒岩勉脚本の誠実さ

『ラストマン』黒岩勉脚本の誠実さ

 TBS日曜劇場で新しくスタートした『ラストマン-全盲の捜査官-』の第1話は、期待を大きく上回る素晴らしい仕上がりだった。

 本作は、アメリカから交換研修生として来日した全盲のFBI特別捜査官の皆実広見(福山雅治)が、警部補の護道心太朗(大泉洋)と組んで捜査を繰り広げる一話完結の刑事ドラマだ。

 まず初めに、強烈な爪痕を残したのが、福山雅治が演じる皆実のキャラクターだろう。目が見えない皆実は嗅覚と聴覚が異常に発達しており、身体に染み付いたかすかな臭いや歩き方の違いで、相手を認識できる。同時に彼は格闘技経験者で、全盲を逆手にとって犯人に接近し、相手が油断しているところを取り押さえる体術の持ち主でもある。何より一番の武器は鋭い分析力と大胆な発想力を備えた天才的頭脳だが、何を考えているのかわからない変人ゆえに、周囲の刑事たちは皆実に振り回されている。

 当たり役となったミステリードラマ『ガリレオ』(フジテレビ系)の湯川学先生もそうだったが、変人の天才キャラを演じさせると、福山雅治は見事にハマる。

 湯川との差別化もあってか、近年の福山は年相応の普通の中年男性を演じる機会が多く、得意のケレン味は抑制されていたが、水を得た魚のように活き活きと皆実を演じている姿を観ていると、やはり福山の本領はこっちだったのかと、納得してしまった。

 対する大泉洋が演じる護道心太朗は、警視庁長官を代々、務めてきた護道家の生まれ。悪に対する怒りが強く、犯人逮捕のためなら手段を選ばない捜査方法が反感を買い警察組織では孤立していたが、その性格が皆実に買われ、バディに抜擢された。

 大泉の芝居は福山とは逆で、抑制的な表情で「受けの芝居」に徹している。彼の「受けの芝居」が絶妙だからこそ、福山の飄々とした芝居が活きている。

 第1話の最後に皆実が心太朗に「M-1でも出ませんか」と言うのだが、どこまでが本気でどこまでが冗談かわからない福山と真面目すぎる大泉の掛け合いは、お笑い芸人のボケとツッコミの応酬のようで、観ていてとても楽しい。

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