子安武人、異色のエイリアンをどう演じた? 『レジデント・エイリアン』の魅力を語る
「吹替版の楽しみ方があってもいいんじゃないか」
――ところで、子安さん自身は、そういう「コメディ演技」については、どうなんですか? 最近は、アニメ『異世界おじさん』の「おじさん」役など、コメディ的な演技を披露する機会が増えているようにも思います。
子安:僕自身は、笑わせようと思ってお芝居をしたことは、一度もないんですよね。それは実写、アニメにかかわらず、どんなコメディ作品であっても。真面目にやっていることが、観る側にとっては、おかしく感じられるのかなって思ってやっているようなところがあって。
――アニメ『ジョジョの奇妙な冒険』の「ディオ」役とかも、観ているうちに、だんだん面白くなってきたようなところがありました。
子安:『ジョジョ』は、コメディじゃないですけどね(笑)。ただ、先ほど言っていただいた『異世界おじさん』もそうですけど、本人は至って真面目にやっているんですよね。それが、端から見ると、ちょっとズレていたりするという。そうやって一生懸命やっていることが、端から見るとおかしいっていうふうになればいいと思っているので。それは、今回の「ハリー/エイリアン」も同じですよね。彼は、エイリアンなりに一生懸命考えて、人間を理解したつもりになって行動しているんですけど、それがちょっとズレているから、観ている人たちは面白いという。だから、笑わせようってことは、いっさい考えないというか、それをやってしまうと、すごくつまらなくなってしまいそうな気がするんですよね。僕はあまり器用なほうではないので、そうやって一生懸命やっているほうに持って行くというか。
――子安さんは、普段割とクールな二枚目の役を演じることが多い印象がありました。
子安:まあ、そこはちょっと運がいいところもあるというか、比較的「いい声」だって言われることが多いので(笑)。そう、昔の海外ドラマや映画の吹き替えとかでもそうですけど、結構「いい声」の役者さんたちが、その「いい声」を使って、ちょっとバカなことを言うだけで、すごく面白かったりするじゃないですか。それこそ、僕が昔から大好きで尊敬している広川太一郎さんだったり、野沢那智さんだったり、とにかく「いい声」の人たちが、ちょっと面白いことを言う。それだけで、すごく面白いんですよね。僕は、そういうベテランの方々の「技」を、たくさん見てきているので。
――わかります。「いい声」なんだけど、言っていることはメチャメチャだったりとか(笑)。
子安:そうそう(笑)。あれはもう、完全にテクニックというか、ひとつの「笑い」の「作り方」なんですよね。だから、この「ハリー/エイリアン」も、声はいいんだけど、言っていることは、ちょっとおかしいよねっていう。そういう感じになったら、それがひとつの「笑い」になるのかなって思って。そういう「笑い」の「作り方」みたいなものは、いろんなパターンがあると思うので、それはこれからも、ちょこちょこ使っていきたいかなって思っています(笑)。
――ちなみに、シーズン1を終えた時点で、この『レジデント・エイリアン』という作品全体に対して、どんな感想を持ちましたか?
子安:タイトルに「エイリアン」って入っていますけど、それ以上に「人間ドラマ」であるというか。やっぱり、その根底にあるのは「愛」だと思うんですよね。男女の愛はもちろん、友情だったり、親子の愛情だったり。さまざまな「愛」が、どのように絡まり合い、そして繋がっていくのかっていう。あと、このドラマって、実は女性の登場人物が多いんですよね。この手のドラマにしては珍しいぐらいに。しかも、全員元同級生だったり、それぞれのキャラが立っていて。彼女たちの会話を聞いているだけで面白い。彼女たちを見ているだけで、話が進んでいってしまうようなところもあって。極端な話、ハリーがいなくても、話が成立してしまうような回もあるんです。それって、どんなドラマなんだろうって思うじゃないですか。
――確かに(笑)。
子安:一応、僕が主役のはずなのに、「今回、ほとんどしゃべってないな」みたいなことが、結構あったりして(笑)。逆に言うと、実はそういうドラマというか、アメリカの田舎町で暮らす人々の「日常」みたいなものが、そのベースにあって。彼/彼女たちひとりひとりの中にも、多かれ少なかれ悩みがあるという。だからある意味、すごく身近なものを描いたドラマでもあるんですよね。そこに、たまたまエイリアンがやってきたと(笑)。
――まあ、たまたまが過ぎますけど(笑)。
子安:(笑)。でもホント、たまたまなんじゃないですか。それがエッセンスとして入っているだけであって、そこをあまりメインにしていないような感じがするというか。それが結果的に、すごくいい「人間ドラマ」を生んでいるんじゃないかなって思うんです。あと、僕がやっているハリーも含めて、実はみんな、それほど若くないんですよね。そこがまたいいというか、多少おかしくても、一応みんな分別のある大人なので、ちょっと達観したところがあって。でも、ちゃんと忘れてないものもあって、やっぱり、恋愛だってしたいんだけど、それがいちばんではないという。そういうところが、いいんですよね。
<この先はシーズン1ラストおよびシーズン2の内容を含みます>
――なるほど。WOWOWでは、5月16日から、早くも『レジデント・エイリアン2~宇宙からの来訪者~』の放送がスタートします。現在、吹替版制作の真っ最中とのことですが、シーズン2の見どころについて、最後に少し話を聞かせていただけますか?
子安:シーズン1の最後が、ああいう形になって……ちょっとネタバレになるかもしれないですけど、一度地球を離れたエイリアンが、結局また地球に戻ってこなくてはならないような状況になって。で、どうなるのかなと思って、シーズン2の台本を読み始めたんですけど、結局何も変わらず、またあの町で普通に暮らしていたっていう(笑)。でもまあ、今回のシーズンもまた、あの町でいろんなことが起こりますよ。そう、ハリー以外の敵性宇宙人も登場するので。
――そうなんですか?
子安:はい。それがハリーと、どう絡んでいくのか。ハリーは一体、どっちの味方なのかっていう問題も出てきますし。そうやって、少し話が大きくなっているような、そうでもないような(笑)。
――(笑)。町の人々の「人間模様」も引き続き気になるところです。
子安:もちろん、そういうのもあります。一応のヒロインである「アスタ(サラ・トムコ/CV:樋口あかり)」も、ホント悩み多き女性というか、娘との接し方を含めて、いろいろ悩みがあって。それは、「アスタ」の同級生である「ダーシー(アリス・ウェッタールンド/CV:松井暁波)」も同じで、いろいろ悩みを抱えていたりするんですけど、そういう悩みを、別にハリーがどうこうするわけじゃないのが、このドラマの面白いところですよね(笑)。
――そうなんですよね(笑)。
子安:普通だったらそこで、ハリーが寄り添って、彼女たちが感化されたりしそうなものなんですけど、そういう話ではないので。どういうカテゴリーのどんなジャンルに属するドラマなのかは、やっぱりわからないっていう(笑)。
――(笑)。個人的には、「吹替版」ならではの面白さを、改めて感じさせてくれるようなドラマでした。
子安:それは嬉しい感想ですね。僕自身、そういうもので育っている世代なので。さっきも言いましたけど、やっぱり、吹替版には吹替版の良さがあると思うんですよね。もちろん、オリジナル版で観てもらっても、すごく面白いドラマだとは思うんですけど、吹替版には吹替版の楽しみ方が、あっていいんじゃないのかなっていうふうには思っているので。そのへんは、今後も探りながらやっていきたいなって思っています。
――収録風景を少し見学させていただいたのですが、割と大人数での収録だったというか、このドラマは、複数の登場人物たちによる「掛け合い」の面白さがありますよね。
子安:そうなんですよ。なので、僕自身、このドラマの収録では、ライブ感みたいなものを、非常に大事にしているところがあって。あんまりカッチリ自分の台詞を決めてしゃべられないことにしているんですよね。もちろん、尺は決まっているので、その中でやらなければいけないんだけど、そのときの掛け合いで、面白い台詞回しになっちゃったら、それでもいいかなぐらいの感じでやっているというか。
――実際、子安さんの言い回しに、まわりの共演者たちが、笑いをこらえているようなシーンもありました。
子安:あ、そうですか(笑)。だから、僕としては、同じ芝居をもう一度やれっていうほうが難しいぐらい、同じ芝居を用意してないところがあって。あくまでもライブ感を大事にして、なるべく今、そこで初めて、その役の人がその言葉を思いついて、口に出したような芝居にしたいんですよね。用意した言葉ではなく、その場の空気の中で、思わず発した言葉にしたいという。そのライブ感みたいなものは、みなさんすごく大事にしながらやっているので、その雰囲気みたいなものは、きっとこの作品の中にも出ていると思います。
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■放送・配信情報
『レジデント・エイリアン ~宇宙からの訪問者~』
WOWOWプライムにて、5月10日(水)02:30より全10話一挙放送
※WOWOWオンデマンドにて同時配信あり
配信ページ
配信ページ:『レジデント・エイリアン2 ~宇宙からの訪問者~』
WOWOWプライムにて、5月16日(火)23:00放送スタート 毎週火曜23:00〜放送
※WOWOWオンデマンドにて同時配信、アーカイブ配信あり
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