『らんまん』は“オタク”が輝く物語? 神木隆之介と植物分類学の運命的な出会い
「え゛、名付け親ですか!」
さて、ドラマ的には万太郎が植物分類学と出会ったことが重要だ。日本国内でしか通用しない和名に対して、万国共通の名前である学名には発見者の名前が刻まれる。幕末の日本を調査して回ったシーボルトのように、命名者となる可能性に万太郎は目を輝かせる。余談だが、田辺は大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合)で尊王攘夷の志士・尾高淳忠を演じており、野田の「攘夷だ何だと騒いでいる時に、誰が植物に目を向ける?」という台詞は味わい深かった。
「世界から見れば、この国の植物はまだ学名も付けられていなければ、発見されてもいないものがたくさんあるんだよ!」と野田は熱弁をふるう。万太郎は、自分が見つけた野草が新種かもしれないと知るが、学名を付けるには標本を比較し、英語で論文を発表しなければならない。しかし、標本の絶対数は不足しており、野田によると「日本人研究者で植物の名付け親になった人間は一人もいない」。標本の採集が喫緊の課題だった。
「わしがこれまでやってきたこと、やりたかったことは、植物分類学ゆう学問やったがですね」と万太郎。漠然と自分がやりたかったことに形が与えられ、新たな意味を見出した。植物分類学という天職と出会ってしまった植物好きの青年。それを目にした竹雄の心境は複雑だ。現実に引き戻された万太郎は何を思うだろうか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK