『らんまん』は“オタク”が輝く物語? 神木隆之介と植物分類学の運命的な出会い

『らんまん』はオタクが幸せになる物語

 『らんまん』(NHK総合)第14話では、万太郎(神木隆之介)の人生に大きな転機をもたらす出会いがあった。

 万太郎と竹雄(志尊淳)は東京旅行の最大の目的である博物館を訪れる。内国勧業博覧会に峰屋の酒「峰乃月」を出展するという目的は表向きのもので、万太郎にとって博物館来訪こそ今回の上京で最大のミッションであった。なぜ博物館かといえば、そこに万太郎の“心の友”がいるからだ。

 万太郎が“心の友”と呼ぶのは、植物学者の野田基善(田辺誠一)と里中芳生(いとうせいこう)。特に野田は万太郎が小学校時代に一目見て虜になった博物図を著しており、尊敬してやまない相手と念願かなって7年越しの邂逅となった。

 万太郎と野田が出会う場面はちょっとした見ものだった。入室する前は「本当にわしなんぞ来てよかったがじゃろうか」と不安でいっぱいだった万太郎は、研究室に入るなり、そこで行われている標本の分類に目が釘付けになる。黙々と作業を続ける研究員たち。その静寂を破ってガラガラと音が響き、「あいたた……」と声がする。椅子から転がり落ちたのは野田その人で、坂本龍馬(ディーン・フジオカ)、池田蘭光(寺脇康文)に続く印象的な登場シーンとなった。

 本作は「“オタク”が輝く物語」と解釈することが可能だ。第14話の万太郎は東京出張を口実にコミケで同人本を買いあさるオタク、あるいは推しに会いに行くファンそのものだった。自己紹介もそこそこに植物トーク(オタ話)に花が咲く万太郎と野田。万太郎は積まれた標本に興味津々で、顕微鏡を見てテンションが上がる。拡大した花弁に興奮して声がうわずり、ニヤけが止まらない。特定の分野に熱中した経験のある人ならわかると思うが、共感しすぎて悶え死にそうになった人もいたのではと推察する。

 野田も野田で植物を「ちゃん」付けし、寝る間を惜しんで研究に打ち込む。周囲の迷惑も省みず「おもしろい話をしてくれ。ときめきでもいい」と貪欲に知識を求める好奇心にガチ勢の本気を見た。野田のリクエストを聞き流し、寝起きの上司に渋い茶を出す研究員は手慣れたものである。続いて現れた里中も、命名前のサポテンを「かわい子ちゃん」と呼ぶ安定のオタクムーブだった。

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