『風間公親－教場0－』刑事への覚悟が芽生えた赤楚衛二　木村拓哉が提示する三つ巴の構図

　警察学校を舞台にしたSPドラマ版のときには否応なしに「退校届」を突きつけていた風間（木村拓哉）だが、今回の“風間道場”で彼が見込みのない新人刑事に突きつけるのは「転属届」。もちろんそこで投げかける言葉は同じである。しかし瓜原（赤楚衛二）は、そんな風間から絶対に逃げまいと必死で食らいついていく。4月17日に放送された『風間公親・教場0』（フジテレビ系）の第2話は、前回に引き続き“人に優しい警察官になりたい”と願う瓜原の物語であり、彼に刑事としての覚悟が芽生えるまでが描かれていく。

　ある小学校に放課後、不登校児童の母親・佐柄美幸（宮澤エマ）がやってくる。息子がクラスでいじめに遭っているが、担任教師の諸田（山田キヌヲ）が見て見ぬふりをしているのだと訴えるためだ。諸田は佐柄に冷たい言葉を投げかけて追い返すのだが、その夜佐柄は帰宅途中の諸田を背後から撲殺。遺体を車のトランクに詰めてアリバイを作り、学校のブロンズ像に頭をぶつけたと見せかけるための偽装工作を図る。翌朝現場を訪れた瓜原は、目を閉じて現場の状況を伝えるよう風間から命じられた。そして、次の事情聴取を担当させてもらえることになり、容疑者として佐柄に目星をつけるのである。

　前回の時点では、まだこのドラマの全体像や方向性が見えていないなかで一気に2つの事件が描かれ、かたや街全体を使った大掛かりなダイイングメッセージと、もう一方は火薬アレルギーと、少々突飛な設定が被疑者を“落とす”ための役割を果たしていた。今回描かれた事件においても、ブロンズ像の持っているブロンズ製の本を一度切り取ってから犯行に使い、それを改めて溶接するという被疑者の行動に突飛さを感じないわけではないが、ごくごくシンプルに、“どのように犯行が行われたのか”というトリックを解き明かすミステリーとして機能していく点でだいぶ見やすいドラマになった印象を受ける。

　あらかじめ犯人が誰だか分かっている時点からストーリーが始まるあたりは、『古畑任三郎』（フジテレビ系）に近しいにおいもするが（とりわけ第1話の後半の事件は、完全犯罪の綻びや動機にまつわるドラマが描かれた点でその色が強く出ている）、同作のような軽妙なタッチとは正反対の、“風間公親に見られている”緊張感が終始張り巡らされている点で、似て非なるものであるとすぐにわかる。あくまでも新人刑事が、指導官である風間と被疑者のそれぞれが提示してくる謎に対峙する。故に、一対一の攻防ではなく三つ巴の構図というわけで、それがこのような倒叙ミステリーのもつ複雑性を、ひとつの道筋に沿った連続ドラマにさせていくのだろう。

　今回そこに介入してくるのは、風間に果敢に立ち向かっていく瓜原の刑事としての成長に他ならない。第1話では取り調べまで持ち込んでものらりくらりとかわされていた瓜原が、自分自身の経験と重ね合わせながら目の前にある事件の謎を解き明かし、そして被疑者に対して躊躇することを選ばない。風間から認められ、道場を後にする瓜原。文字通り瓜原と入れ替わりで風間道場に入ってきた隼田聖子（新垣結衣）。ドラマが次の段階に進むとなれば、今後のエピソードで瓜原が登場するのかどうか。正真正銘の“刑事”となった姿を見たいものだ。

■放送情報
フジテレビ開局65周年特別企画『風間公親－教場0－』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00～21:54放送
出演：木村拓哉、赤楚衛二、新垣結衣、北村匠海、白石麻衣、染谷将太ほか
原作：長岡弘樹『教場0 刑事指導官・風間公親』『教場X 刑事指導官・風間公親』（小学館）
脚本：君塚良一
演出・プロデュース：中江功
プロデュース：渡辺恒也、宋ハナ
音楽：佐藤直紀
主題歌：Uru「心得」（ソニー・ミュージックレーベルズ）
制作・著作：フジテレビ
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