『女神の教室』で知る“被害者学”の厳しい現実 尾上松也演じる風見の常軌を逸した行動

『女神の教室』“被害者学”の厳しい現実

 3月6日に放送された『女神の教室 〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)第9話。今回描かれた塾講師による強制わいせつ事件は、第1話の序盤、風見(尾上松也)の初登場シーンからすでに描かれていた。無罪判決が下されたことについて書かれた新聞記事を守宮(及川光博)に見せて意見を求める。この事件と、ドラマ前半で柊木(北川景子)やその教え子たちに嫌がらせをしていた津山(安井順平)の死。二つの事件が風見という人物を通して繋がる。それは、罪に問えない犯罪を異様なまでに憎んでいるという点である。

 無罪判決を受けた塾講師の松下(渡部秀)を監視し、逆に通報されてしまった風見は1カ月の停職処分となる。その話をネットニュースを通して知った真中(髙橋文哉)や照井(南沙良)たち5人は、柊木から事件について聞かされる。証言をするはずだった被害者の自殺で証拠不十分として無罪になったことを知り、それは本当に正しいことなのかと疑問に感じる照井と天野(河村花)。そこで2人は、実務演習の授業でこの案件を取り上げてほしいと柊木に頼む。一方、津山が予備校に通っていた事実を知った藍井(山田裕貴)は、あるきっかけで津山の死に風見が関与しているのではないかと疑うようになる。

 今回描かれた主題は、これまで描かれてきたものよりも結論づけることが極めて難しい。法律は決して万能ではないとでもいうべきか、そもそも刑事裁判とは何を目的にしているものなのかということを知る必要があるだろう。それは実務演習の授業で柊木が語る、冤罪の防止というのが簡潔かつ適切だ。「疑わしきは被告人の利益に」という言葉もあり、また「10人の真犯人を逃すとも、1人の無辜を罰するなかれ」という言葉もあるわけで。

 あくまでも刑事裁判は真実を明らかにする場所ではなく(従来のリーガルドラマではそうなるきらいもあるが)、持ち寄られた証拠をもとにして有罪か無罪かを判断する場所に過ぎず、証拠が揃わなければ無罪になる、というよりも有罪には“できない”のである。もちろん、それが揃っているからこそ検察が起訴に踏み切るのであって、有罪率99.9%はそういったところからきている。そしてもっといえば刑罰とは、国家が社会秩序を維持するために中立的立場において科すものであって、被侵害利益や損害の回復を意図したものではないという判例もある。

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