『星降る夜に』情報の引き算で吉高由里子に寄り添う北村匠海 愛ゆえに苦しむ登場人物たち

『星降る夜に』情報の引き算で寄り添う一星

 「そんな言葉、聞かなくていい」と、鈴(吉高由里子)の耳をふさいだ一星(北村匠海)。その姿は、「鈴の悲鳴が聞こえないから自分には彼女を守れないのでは」と苛立っていた、あのときの一星からグッと成長していた。スーツでキメているからだけではない、大人の余裕が感じられた。

 さらに深夜と共に手持ち花火ではしゃいで見せたかと思えば、思わず泣いてしまっている鈴に気づかないフリをする。何かと背負ってしまう鈴だから、ときには耳を塞ぐこと、見て見ぬフリをするという、情報の引き算をしてあげる。それが、一星の行き着いた鈴の守り方なのだと気づいたのだろうか。自分にできるやり方で、誰かを愛するということ。ドラマ『星降る夜に』(テレビ朝日系)第7話は、そんなそれぞれの愛について考えさせられる回だった。

名前のつけられない関係と、名前がつくからこそ得られる理解

 一星とはまた違った形で鈴のために奮闘しているのが深夜(ディーン・フジオカ)だ。身を挺して鈴を守る姿に、マロニエ産婦人科医院の院長・麻呂川(光石研)も、「遺品整理のポラリス」の社長で深夜の同級生でもある千明(水野美紀)も、特別な感情があるのではと問う。

 「そういうんじゃない」と答える深夜に、千明が「みんな男と女を見ると関係に名前をつけたがる」と話すのが印象的だった。職場の先輩後輩というには親しく、友人というにはちょっぴり遠慮がある。でも、ピンチのときには真っ先に駆けつけて味方でいてくれる。もちろん好意はある。けれど、Give and Takeで成り立つ恋愛関係に発展させていきたいわけではなく、たとえ相手にGiveする一方になっていたとしても満足することができる……そんな、まだ適切な名前のつかない関係性。このまま名前がつかなくても本人たちの間に温かな空気が流れていれば、それで問題ないように思う。

 だが、名前がつくことで理解できることもあるのだ。マロニエ産婦人科医院で働く看護師の麻里奈(中村里帆)と彼氏の関係も、世間一般的に使われている「恋人」というにはちょっと周りが心配になってしまう部分があった。麻里奈が働いてお金を稼ぎ、絶賛夢追い中の彼氏はそれを惜しみなく使ってしまう。そんな関係性を「推し」と名付けたのは、同じくマロニエ産婦人科医院の看護師・志信(長井短)だった。「推し活」を生きがいにしている志信は、「推し」を支えていくことこそ自分の喜びであることを熱弁。麻里奈にとって彼氏は「推し」、そう考えれば「わかる!」と固く抱きしめるのだった。

 関係性に名前をつけたがるのは、周りがその人たちを理解したいから。名前がない関係性があってもいい。でも、もし周りも穏やかに見守ることができる名前を新しくつけることができたら。それだけバリエーション豊かな人間関係があると理解されて、今よりもっと幸せが広がっていくかもしれない。

 鈴と深夜、さらにそこに一星も加わって3人で過ごす、この関係性をなんと名付けようか。同志? キャンプ仲間? 鈴を守る会? いやいや、もっとしっくりくる名前を見つけたい! そんなことを考えてみるのも、またこのドラマを観る楽しみだ。

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