田中圭の“魅せる指揮”が心を奪う 『リバーサルオーケストラ』で輝くセンスとカリスマ性
水曜ドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)が楽しい。少し日本語がおかしいのは承知しているが、あのドラマを観ていると「楽しい」という感情が湧き上がるのだ。
愛すべきポンコツオケ「児玉交響楽団(玉響)」でも、ドラマが担う「音楽エンターテインメント性」の面でも指揮をふるのは、天才マエストロ・常葉朝陽を演じる田中圭。彼は、元天才ヴァイオリニストの主人公・谷岡初音役の門脇麦をはじめとした出演者とともに、どこか遠かったクラシック音楽の世界に我々を誘ってくれるーー。
本作の見どころのひとつとなっているのが、玉響による演奏シーンだ。私はまったくの素人なので、役者の演奏や指揮の「上手・下手」には興味が向かない。もちろん、明らかに違和感を覚えたり、披露できるレベルでないのは論外だったりするが、そのシーンで感情を動かされたかどうかの方が、はるかに重要だと思っている。
その観点から言うと、特に第3話の演奏会シーンは圧巻だった。クラシック音楽に詳しくなくても、どこかで耳にしたことのある楽曲「威風堂々」が採用されて親しみやすかったし、オーケストラ一人ひとりの表情が真剣でもあり、生き生きしていて魅了された。
そしてもうひとつ感動したのが朝陽の指揮。自分の中に「田中圭がやっているから」という要素は乗っかっているだろうが、凛として指揮台に立つ彼に目を奪われた。序盤からタクトで楽団を操り、盛り上がるところで感情を高めて、華麗に締める。それはまるで、五線譜に描かれた音の世界で踊る主人公のようだった。
約3分半ほどの演奏シーンの中でいくつもの感動があったし、これまで遠い存在だったオーケストラを身近に感じて「演奏会ってこんなに楽しいんだ!」と思ったのを覚えている。これが目には見えないエンタメの力だと痛感した。
『リバーサルオーケストラ』序盤最高潮の盛り上がり 田中圭の繊細かつダイナミックな指揮
ドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)が回を増す毎に面白くなってきている。第3話は、序盤のクライマックスというような最…
そんな玉響の舵をとる朝陽のキャラクターも個性的。音楽愛が強い彼は、魅力がありながらも美しくない音を奏でる玉響の演奏にイライラしっぱなし。容赦なくメンバーにダメ出しをしていくのだが、田中の言葉にトゲが“生えている”ような巧みな言い回しが秀逸で、ついニヤリとしてしまう。ただ、そうやって常にツンツンしているのに、たまに見せる「デレ」ですべて帳消しにされるのが油断ならない。ツンデレなんて、いにしえからある手法なのに……我々は簡単にやられてしまうのだ!(朝陽本人に自覚はないのだけど)