『ブラッシュアップライフ』に登場し話題に 90年代を象徴する“ポケベル”とドラマの変遷

"ポケベル"はドラマにどう登場してきた?

 バカリズム脚本のドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)は、33歳で命を落とした近藤麻美(安藤サクラ)が、来世も人間に生まれ変わるため、何度も人生をやり直そうとする地元系タイムリープ・ヒューマンコメディだ。

 劇中では麻美が体験する1990~2020年代の流行歌やドラマ、コミュニケーションツールが多数登場するのだが、第1話に登場して話題となったのが、ポケベルである。

 幼い麻美(永尾柚乃)は、友達の森山玲奈(鈴木凛子)のお父さんと保育園の先生が不倫するのを防ぐため、玲奈のお父さんが先生に渡したポケベルの番号を、こっそりと盗み出す。そして公衆電話から「フリン シタラ バラス」というメッセージを送る。

 不倫は無事阻止され、お父さんのカーステレオから国武万里の「ポケベルが鳴らなくて」が流れて第1話は終わるのだが、この歌は緒形拳と裕木奈江が出演した1993年のドラマ『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系)の主題歌だった。

 企画は秋元康、演出家には後に『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)や『ケイゾク』(TBS系)を手掛ける堤幸彦が参加していた。ソフト化も配信もされていないため、今では幻のドラマとなっているが、時代を象徴するキャッチーなタイトルと、家庭を持つ男性と不倫する女性を演じた裕木の演技に説得力がありすぎたため、女性誌から激しいバッシングを受けたことは、今でも語り草となっている。

 この曲が不倫ドラマの主題歌だったことを知っていると、『ブラッシュアップライフ』のポケベルの使い方はとても批評的だとわかる。今では完全に廃れてしまった「ポケベル」を、90年代を象徴するアイテムとして用いる脚本の上手さに感心させられた。

 総務省の公式サイトによると、ポケベルの元となる「無線呼び出しサービス」は1968年に電電公社(日本電信電話公社)がサービスを開始したという。当初は呼び出し信号を送信して着信音を鳴らす機能のみで、外で営業中のサラリーマンが連絡を受けて、公衆電話から会社に連絡するといったビジネス目的の連絡手段に用いられていた。

 当時の会社を舞台にしたお仕事ドラマや刑事ドラマを観ると、着信を受け取った男が公衆電話から連絡する場面がいくつか登場する。

 これが1987年になると、端末に数字を表示できる機能が追加されたことでビジネス目的以外のコミュニケーション手段として一般に普及する。表示できるのは数字だけだったため、「999」(サンキュー)「114106」(あいしてる)といった語呂合わせのメッセージ送信が女子高生の間で広がり、公衆電話でメッセージを送り合う姿が見られた。

 そして90年代後半になると絵文字や文字も送信できるようになる。字数の制限こそあったが、その辺りから個人使用のポケベルの契約数が増大し、女子高生のコミュニケーションツールとして定着していった。

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