『ブラッシュアップライフ』に登場し話題に 90年代を象徴する“ポケベル”とドラマの変遷

"ポケベル"はドラマにどう登場してきた?

 『ポケベルが鳴らなくて』が放送された1993年は、時代的にはポケベル普及のど真ん中だった。そのため、ビジネスツールとして用いる既婚者のおじさんとコミュニケーションツールとして用いる若い女の子が不倫する際に秘密でつながるための連絡手段としてポケベルが登場する流れは、理屈としては理解できる。だが、それは「ドラマの世界」の都合という感じで、どこかピントがズレているように当時は感じた。

 男子校に通う高校生だった筆者にとって、ポケベルは無縁のコミュニケーションツールだったが、雑誌やニュースで報じられているポケベルの使われ方はもっと他愛のないもので、現在の我々がメッセージアプリでスタンプを送り合うように、短い文字を送り合っていた。

 1996年のドラマ『ピュア』(フジテレビ系)にも、ポケベルが登場し、「魔法のベル」と表現されている。和久井映見が演じるサヴァン症候群の女性芸術家と堤真一が演じる記者の心のつながりを示すアイテムとして用いられていたが、これも現実とは別物の、ファンタジックな魔法のアイテムという扱いだった。

 逆に今観てもゾッとするようなリアリティを感じるのが、1997年のドラマ『職員室』(TBS系)の第8回「裏切ったベル友」に登場するポケベルの描き方だ。

 本作は、浅野温子が教師役を演じる中学が舞台の学園ドラマで、いじめ、登校拒否、体罰、といった社会問題を扱った硬派な作品だった。この回では、女子生徒たちがポケベルで無数のメッセージを送り合い、ベル友の数を増やそうと熱狂する姿が描かれるのだが、自分が無視されていると思い込んだ女子生徒が公衆電話から「シネ シネ シネ」というメッセージを送る場面が登場する。

 ちなみにこの回には、パソコンのメールや携帯電話も登場するのだが、パソコンと携帯電話のメール機能が普及したことで、ポケベルは急速に廃れていった。

 その意味で、今では完全に失われた風景だが、ベル友に承認を求める女子中学生たちの姿は、SNSに翻弄される現代の私たちの姿と大差はない。ポケベルはもう鳴らないが、当時生まれた困難は、今も形を変えて続いている。

■放送情報
日曜ドラマ『ブラッシュアップライフ』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜放送
出演:安藤サクラ、夏帆、木南晴夏、松坂桃李、染谷将太、黒木華、臼田あさ美、鈴木浩介、バカリズム
脚本:バカリズム
演出:水野格、狩山俊輔
プロデューサー:小田玲奈、榊原真由子、柴田裕基(AX-ON)、鈴木香織(AX-ON)
チーフプロデューサー:三上絵里子
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/brushup-life/
公式Twitter:@brushuplife_ntv
公式Instagram:@brushuplife_ntv

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