『舞いあがれ!』が問いかける“ふつう”や“真っ当” 2組の親子の描き方から見えた現代性

『舞いあがれ!』が問いかける“ふつう”

 これまでの朝ドラではたいてい、定職につかない父親は娘の進路を阻む存在だった。だが、今回はそうではない。制作統括の熊野律時チーフプロデューサーは番組の取材会で「とかく、『ふつう』や『ちゃんとする』『真っ当に生きる』というような言い方をしますが、『ふつう』や『ちゃんとする』『真っ当』とはどういうことなのかという問いは『舞いあがれ!』では大事なところです。そこにじつは明確な尺度はなくて、みんな一生懸命生きている。そのことを肯定して、それこそがちゃんと生きていくという意味なのではないか。そういう事柄を散りばめていこうと、桑原亮子さんと初期の構想段階で話しました」と語っていた。

 舞はめぐみを怒らず、久留美は佳晴を否定せず、ふたりとも親の考え方も受け止めようとする。なんだか、親世代が子供たちに助けられているような印象すら感じる。親たちはたぶん、若い頃、親に反発して(めぐみは祥子(高畑淳子)に反発していた)自分の思う道をぐいぐい突き進んでいたが、子供たちのほうが心広く、深い。

 舞も物腰はソフトだが自分の思った道を突き進んでいく頑固タイプながら、他者のことを尊重できる人物なのである。対立軸で描かないため、ドラマとしてのメリハリに欠け歯応えがややないが、穏やかでゆるやかな空気が観ていて心地よい。「あせることないよ。ゆっくり気持ちの流れに任せて新しいことがみつかるまで待ったらええやん」と舞を励ます貴司(赤楚衛二)のセリフのとおり、あせらず、ゆっくりとドラマは進んでいく。だがしかし、悠人(横山裕)のインサイダー取引疑惑によって俄然、メリハリが効いてきた。事件がのっぴきならないことになったとき、悠人を交えた家族関係はどんな様相を見せるのか。めぐみも舞も悠人を受け入れることはできるのか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる