『舞いあがれ!』山口智充&くわばたりえの絶妙なバランス感 うめづの陽気に活力をもらう
朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)の放送開始時から、抜群の安定感を維持し続けている“梅津夫妻”こと山口智充とくわばたりえのコンビ。本作のにぎやかし役でもあるこの2人の存在が、物語の展開を常に照らしている。劇中の登場人物たちのみならず、この夫婦に救われている人は少なくないだろう。このドラマになくてはならない存在なのだ。
山口とくわばたが演じているのは、ヒロイン・岩倉舞(福原遥)の幼なじみの梅津貴司(赤楚衛二)の両親である勝と雪乃。勝は舞の父・浩太(高橋克典)の幼なじみでもあり、雪乃は舞の母・めぐみ(永作博美)の良き相談相手でもある。梅津家は、一家そろって岩倉家と深くて固い繋がりがあるのだ。しかも二人が営んでいるお好み焼き屋「うめづ」は、舞たちが暮らす東大阪の人々の憩いの場。楽しいときも、悲しいときも、みんなここに集まってくるのである。
勝も雪乃も本作においては個として独立したキャラクターとは言いがたい。登場する際、基本的に2人は一緒であり(そもそも登場シーンのほとんどが「うめづ」だ)、ほかの登場人物と絡む場合ももちろん2人は一緒。いつも作品にポジティブオーラを持ち込む存在になっているが、それは2人が揃ってこそ機能するもの。山口とくわばたのコンビにしかできない陽気な掛け合いが、これを実現させているのだ。
この2人のキャスティングは絶妙である。ともに大阪出身者であり、表現活動のスタートは「お笑い」にある。しかし、俳優として相当な経験を重ねてきた山口が5度目の朝ドラ出演というのに対し、くわばたは初めての朝ドラ出演どころか、そもそも彼女は演技経験そのものが少ない。2人には俳優としてのキャリアに大きな差があるのだ。ともするとこういった場合はデコボコでチグハグな演技に陥ってしまい、視聴者にとっての作品の違和感にも繋がりかねないだろう。けれどもそうはならないのが、この山口&くわばたコンビなのである。