『舞いあがれ!』永作博美を母親役に起用した理由は? 入念な取材によって生まれたリアル

永作博美をめぐみ役に起用した理由は?

 『舞いあがれ!』(NHK総合)第16週「母と私の挑戦」にて、倒産の危機にあった株式会社IWAKURAが借金を返済、さらには大型案件を受注し、新たなスタートを切った。そこには先代の浩太(高橋克典)から社長というポジションを受け継ぎ、実の息子であり投資家でもある悠人(横山裕)と経営者としてビジネスを交わしためぐみ(永作博美)の手腕が大きくある。

 ヒロインの母親が人生の大きな局面を迎えるという朝ドラとしては珍しいこの展開を見据えて、永作博美にめぐみの役をお願いしたと制作統括の熊野律時は明かす。

「深い母親としての愛情を持ちながら、それまでとは全く生き方の異なる経営者としてIWAKURAを背負っていくめぐみの姿は、『舞いあがれ!』の中でも大事に考えてきた要素の一つです。大きな困難にぶち当たった時、めぐみはどういう風に立ち向かっていくのか。つらい場面でも歯を食いしばって、それでも笑顔になって前に向かっていく力強さと脆さ――浩太さんが亡くなってしまうシーンはその最たるものですけど、一瞬の事態が飲み込めないところからガーッと崩れ落ちていく、第15週~第16週で娘と一緒にIWAKURAを立て直し、前を向いていく一つひとつのお芝居に心を震わせられました。こういうめぐみさんを描きたかったと、素晴らしい形で永作さんに表現していただいたと思っています」

 『舞いあがれ!』では、人力飛行機サークルや航空学校と同じく、東大阪の町工場にも徹底した取材を行っている。その数は実に100社以上。物語には到底盛り込めないほどの数あるエピソードを聞いていく中で、『舞いあがれ!』でポイントとして描かれているのが会社の経営が厳しくなった時、従業員に対してどう対処するのかである。どうしても従業員を切ることはできないというのが浩太にある経営者としての矜持だったが、必ずしもそのことが正しいとは限らない。浩太もめぐみも時には間違った判断をしてしまうかもしれない。大事なのはそれをどう修正していくのかの選択であり、笠巻(古舘寛治)をはじめとする職人とのやり取りを含めて、IWAKURAがどう立ち直っていくのかの道筋は丁寧に作ってきたという。

 取材を重ねていくと女性の職人が多く働いている会社もあった。その存在を象徴しているのが、笠巻の下で活躍している土屋景子。演じる二宮星は熊野が担当していた朝ドラでもある『カーネーション』で、ヒロイン・糸子の幼少期を好演していた。

「工場の取材をしていると、女性の職人さんが増えてほしいとおっしゃっている方もいました。どうしても男の世界に見られがちなんですが、そこは技術とやる気があればできる仕事のはずです。好きであれば女性が活躍できる世界というのが物語を通して見えてくればいいなと思い、職人の中に女性の土屋を登場させています」

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