『舞いあがれ!』大浦千佳演じる事務員・山田紗江の役割とは? 制作統括にその魅力を聞く
『舞いあがれ!』(NHK総合)に登場する株式会社IWAKURAの事務員・山田紗江(大浦千佳)が、回を重ねるごとに注目度を増している。
山田の初登場は第17話。岩倉螺子製作所時代からの言わば古参メンバーで、従業員18名、2つの工場へと事業を拡大させた、物語では舞(福原遥)が大学に入学したばかりの頃まで遡る。徐々に存在感を放ち始めたのは、IWAKURAがリーマンショックの煽りを受け、リストラの選択を迫られるようになってから。先代の社長であった浩太(高橋克典)が亡くなり、社長代理としてめぐみ(永作博美)がその席を引き継ぐことになってからすぐにIWAKURAを辞めていった経理の古川輝海(中村靖日)には、「逃げんのはっや! もうおしまいやな」と罵声に近い嫌味を舞に向けて言い放ち、舞が初めての飛び込み営業に出かける時には「あ~あ、無駄に張り切ってはるわ」と愚痴をこぼす。
古株として仕事は卒なくこなすことから、きっとリストラの対象にはならなかったのだろうが、きっちり定時退社で合コンに向かい、舞やめぐみに聞こえるようにして悪口を言う姿はどう見ても感じは良くない。1月16日放送の『あさイチ』(NHK総合)の“朝ドラ受け“でも、キャスターの1人である博多華丸から「あの子、そろそろいい子にならんかな? 聞こえてますよ、あれ、社長に」と指摘する場面があったほどだ。
良くも悪くも異彩を放つ、どこか憎めないクセのあるキャラクターになっている山田について制作統括の熊野律時は、「絶妙にチクチクと嫌味を言う感じがいいですよね」と話しながら、「舞の置かれている現在地を、嫌な言い方ではあるんですけどかなり的確についてくる」と山田の立ち位置と役割を解説する。
ハカタエアラインへの就職が1年延期となり、IWAKURAに顔を見せるようになった舞は、会社の従業員にとっては「手伝いにきている社長の娘」に過ぎず、山田を含め舞は彼らから「お嬢さん」と呼ばれていた。「人力飛行機編」「航空学校編」とはっきり言ってしまえば、恵まれた環境の中で、まだ世間を知らない舞が職場に飛び込むことで今いるリアルな現在地が炙り出されている。山田の小言は常に舞に向けられていたものだ。
「舞がIWAKURAをなんとかしたいと言ってもどうするのっていう、その核心に迫っていく大事な視点として、山田を配置しているところはあります。お手伝いで社長のお嬢さんが会社に出入りしていることにカチンときているのは社員の中にも何人もいるでしょうけど、山田はそれをはっきり口に出す人です。そこに舞が何を見せていくのかが、ここからの展開になっていくので、山田のキャラクターも大事なポジションだと思っていますね」(熊野)